ついに目標が達成されました!

 4月の全国消費者物価は、生鮮食品を除く指数で前年同月比2.1%の上昇と、3月の0.8%から大幅に加速しました。エネルギー価格の高騰に加え、去年4月の携帯電話料金の大幅値下げの影響が剥落したことが要因ですが、2013年以来の政策目標だった2%の物価上昇にようやく達したのです。これほどの「悲願」を達成したのですから、黒田総裁がくす玉でも割るのかと思いきや、皆さん、浮かない顔で、「コストプッシュ型の悪い物価上昇」は「望んでいた自律的な物価上昇」とは異なるので、「異次元緩和政策に変更はない」と言うのです。おいおい、目標を設定した時に「悪い物価上昇の場合は除く」とは言わなかったじゃないか、と突っ込みたくもなります。

 確かに、日銀の言うように、今の物価上昇は、海外発のとりわけ資源インフレが主因で、国内需要の増大が生み出したものとはいえず、ましてアメリカのように賃金上昇も伴っていません。また、1-3月期のGDPもマイナス成長で、今、金融緩和をやめる理由は見当たらないでしょう。それはそうかもしれません。でも、しれっと、それで終わりでいいのでしょうか。

 2%の物価目標は、デフレ脱却をめざす当時の安倍政権と黒田日銀がマクロ政策運営の中心に据えた政策です。その達成のために「異例」かつ「大規模な」金融緩和に踏み切り、短期金利をマイナスにまで引き下げ、国債も発行の半分を日銀が買い取るまでに増発しました。言ってみれば、この2%目標達成のために、家計からは金利収入が奪われ、将来世代には国債返済のツケがまわるというコストがかかったのです。この9年間の政策の総括が何もなく、ただ「これまで通り続けます」だけで、済まされては困ります。

 この政策には、当初から「通貨の量を増やせば物価が上がるという単純な話ではない」といった手法への異議や、「物価は結果であって経済低迷の原因ではない」という目標設定への批判、さらには「物価だけ上がっても給料が上がらないと困る」といった素朴な疑問まで、様々な論点がありました。2%を達成した今、いずれの議論にも一定の理があるように思えます。実際、日銀が「良い物価上昇」「悪い物価上昇」といった議論を持ち出した時点で、この政策の目標としての正当性は怪しくなったと言ってもよいでしょう。

 もちろん、アベノミクスに伴う異次元緩和には、円安を通じた輸出の促進や、資産価格の上昇、そして何より、雇用増大など多くの成果があったと思いますが、金融緩和さえ進めれば前向きな物価上昇が起きるというのは幻想だったと言わざるを得ません。今求められているのは、現在進行中の「悪い」物価上昇を、どうやって自律的な「良い」物価上昇や賃金上昇につなげていくかと言った建設的な議論でしょう。

需給ギャップがなお残る日本経済にとって、引き締め転換が適切なわけはありませんが、2%物価上昇を政策目標の中心に据えることの是非や、この間の弊害是正など、政策の点検や微修正が必要な時期に来ているのではないでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)