神奈川県鎌倉市の郊外の高台に「今泉台」という住宅地があります。1960年代、高度経済成長期に造成され、現在は約5000人(約2000世帯)が暮らしますが、40%以上の住民が65歳以上で、鎌倉市内の地域別では高齢化率が最も高くなっています。
地域内に2つある商店街も、昔からあった青果店や鮮魚店などは閉店が相次ぎ、シャッターが目立ちますが、この商店街に、4月、新しいお店がオープンしましたので、その取り組みを取材しました。
地元住民が開いた魚屋さん
新しいお店は、今泉台の商店街の一つ、「北鎌倉台商店街」に4月26日にオープンした、一般社団法人「鎌倉さかなの協同販売所」が運営する「サカナヤマルカマ」。鹿児島県阿久根市の漁業関係者が協力、阿久根直送の新鮮な魚が並びます。
5月12日(金)、開店時間の午前11時に行くと、店長の田島幸子さんたちが準備する中、今泉台に暮らす男性が現れました。きょうは自分の誕生日だという男性。田島さんはまずは、「おめでとうございます」。そして、おめでたいので「マダイの刺身」を購入。男性は「ここは魚屋が3、4年ないんです。だから、田島さんは本当に頑張ってくれているんです」と話します。


男性と顔なじみの田島さんは、今泉台の元町内会長。「サカナヤマルカマ」は、地元住民が主体になって立ち上げた魚屋なんです。そのきっかけは、後継者不足や新しい市場開拓といった課題を抱えた阿久根市の漁業関係者が、5年前にこの地域で魚の移動販売を行ったことでした。田島さんは「魚屋さんが欲しいと思ってる住民が移動販売に列をなしたんです。完売になるのがもう、日に日に早くなるという状態だったので、魚屋はどうしてもこの住宅地には一軒なくてはいけないな、と思ったんです」ときっかけを説明します。
もちろん、住民は魚屋経営には素人ですので、元水産庁勤務の元漁師、上田勝彦さんをアドバイザーに、プロジェクトを立ち上げました。資金は、クラウドファンディングで、地域住民を中心に寄付を集めました。
