男女の中・長距離種目に東京五輪入賞コンビが登場する。ゴールデングランプリ(GGP)2023横浜が21日、今年は横浜市の日産スタジアムを舞台に15種目が行われる。男子3000m障害には東京五輪7位の三浦龍司(21、順大)が、女子1500mには東京五輪8位の田中希実(23、New Balance)が出場。三浦は3000m障害初戦となる。8月の世界陸上ブダペストの参加標準記録は8分15秒00で、昨年8分12秒65とすでに突破済み。シーズン前半のピークを作っていく第1戦と位置づけている。田中は4~5月に米国で2レースと高地練習を行い、帰国後の練習もかなり感触が良い。順大の長門俊介駅伝監督、New Balanceの田中健智コーチに2人の現状を聞いた。

関東インカレで戻ったキレのある走り

三浦は先週(5月14日)の関東インカレ5000mに優勝した後、GGPの目標記録を「8分20秒を切れたら」と話した。昨年9月に8分12秒65と、8月の世界陸上ブダペストの参加標準記録はすでに突破している。記録的な部分を焦る必要はないが、自身が持つ日本記録の8分09秒92に近づいてほしい期待もある。

今季の三浦はスロースタートになっている。昨年は4月上旬の金栗記念1500mで3分36秒59の日本歴代2位と、専門外種目で驚異的なタイムで走った。今年は同じ金栗記念1500mで3分41秒82。4月末の織田記念5000mも昨年の13分32秒42から13分35秒00に。
三浦らしい勝負強さが見られず連敗した。
しかし関東インカレ5000mは13分45秒52で2連勝。しっかり勝ちきった。

「関東インカレは3000m障害にもつなげられるように、ラストのキレを意識しました。障害があったとき、どれだけラストが上がるのか。感覚的にはキレのある動きができているのでタイムが付いてくれば」

GGP前日会見では上記のように話した。
ペースメーカーの設定タイムは2000m通過が5分35秒。21年日本選手権で8分15秒99(当時日本新)を出したときの2000m通過が、5分35秒だった。ラスト1000mがそのときと同じ2分40秒前後なら、今回も8分15秒あたりのタイムも期待できる。三浦の復調がかなり進んでいることになる。

強化期間を4月中旬までとった影響も

三浦の状態の上がり方が昨年よりも遅いのは、1~2月に教育実習を3週間行った影響もある。例年なら練習強度を上げて「強化期間」(長門監督)とする時期だが、今年は母校の洛南高の高校生と一緒に練習をした。
長門監督が今季のここまでの流れを説明してくれた。

「教育実習期間も継続という意味では最低限の練習はやっていましたが、強化の時期の過ごし方はできませんでした。日本選手権クロカン(2月26日。塩尻和也=富士通=に13秒差の2位)も、できる範囲で走った感じです。1月にゆっくり休めなかったので、クロカン後に1週間休んで、3月中旬から4月中旬までを強化期間として練習しました。期間としては長くとって、金栗の頃はまだ強化期間内でした。関東インカレも練習の一環でしたね」

GGPからは3000m障害が、6月の日本選手権、ダイヤモンドリーグ・パリ大会と続く。GGP前はハードリングなど3000m障害用の練習はそれほど行っていないが「GGPを踏まえて、感覚や技術を試行錯誤させていきたい」(三浦)という。

今後は実戦とトレーニング期間を交互に設定して状態を上げていく。長門監督は世界陸上までのスケジュールを、次のように考えている。

「GGPからの3000m障害3戦を通して、ビルドアップ的に仕上げていって、第一弾としてのピークを作ります。その後一度タメを作って、そこから世界陸上に今年一番のピークを持っていく」

長門監督の説明では、関東インカレの三浦はまだまだ仕上がっていなかった。ラスト1000mで一度前に出たが、そのまま押し切ることができず、ラスト200mでの勝負に切り換えた。「そういうところを考えたら、GGPも8分20秒台前半でいいのかもしれない」。

GGPは8分15秒まで上がる可能性もあるが、8分20秒かかる可能性もある。期待もできるが、そこまで期待しなくてもいい。両面がある三浦の3000m障害初戦になるだろう。