原爆資料館 元館長 原田浩 さん
― 大統領が原爆資料館に入っていきました。中でどんな資料を見てもらいたい?「見てほしいものはいろいろありますけれども、まず1つ、どうしても見てほしいのは、やっぱり『滋くんの弁当箱』だと思います。滋くんの弁当箱は、どういうメッセージを発信してきているのか、そこを見極めてもらいたいと思っています。おそらく時間は十分ないのかもわかりませんけども、わたしは滋くんのお母さんに会いました。いろんな言葉を交わしましたけども、自分の子どもが1発の原爆によって命を奪われた。しかも自分が持っていた弁当も全く食べないままに黒こげの状態で発白骨死体と一緒に発掘できたということを、おばあちゃんから聞きましたときに、
わたしは本当に無念な気持ちが十分に伝わってきました。まさに広島の被爆資料というものは、1つひとつがストーリーを持っています。そのストーリーもしっかりと受け止めてくださることをしないと、広島の原爆資料館を見ても十分なメッセージを発信できないんじゃないかなというふうに思います」

原田浩 さん
「中学生たちの衣類を集合展示をしているところがありますけども、衣類だけを展示しても、当時の惨状は伝わってこないと思います。あくまでも想像の世界でしかないと。わたしどもは、あの惨状を自分の目で見ましたので。体がちぎれたもの、首がなくなった人、あるいは皮膚がとけて流れたもの、黒こげの死体となったもの。そういう1つひとつが、衣類の中に包まれていたんだと。そこをしっかりと確認はしていただきたいと思いますが、残念ながら今の資料館の展示では十分なことが伝わっていないと思います」

共同通信社 編集委員・論説委員 太田昌克 さん
「現在進行形なんですよ。無念で不びんでならんっていうね。このストーリーを岸田さん、しっかりバイデンさんや核保有国のみなさんに説明してほしいなって本当にそう思いますし、それを踏まえたら、19日夕方・夜、出てくるであろう核軍縮不拡散の文章というのは当然、変わっていく。抑止力の前にまず、核をどうなくすか、これを使ってはいかんのだというメッセージが当然、出てこなきゃいけないと思います」

― 今回の案内役は岸田総理だともいわれていますし、議長国ですから、そのあたりの話を主導しなければならない。期待というか、やらなければならない責務というのは大きい。

太田昌克 さん
「官僚の作った作文をなめてるようじゃ、あかんのですよね。きょう、ここで見てきたこと、これを夕方の議論で首脳たちが自分の思い、心に刻んだこと、そして未来にどうメッセージを放つか、それは過去を振り返って、初めて可能なことであって、現在進行形だということをしっかり認識すること。そこが、わたしは原点・スタート地点だと思います」

原爆資料館 元館長 原田浩 さん
「わたしは、各国の首脳をずいぶんお迎えしましたけれども、非常に強い印象を持っておりますのは、ドイツのワイツゼッカー大統領でした。彼の言葉というのは、
『過去を振り返らない者は、現在にも将来にも盲目になる』という言葉を残しておられます。そのことは何なのか。過去を振り返って、きちんと検証し、そして、それを次の世代に伝えることが必要だと思います。それができるかどうかも今回のサミットの中の大きな課題ではないかと思っています」