イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの実権を握って1年。現地で取材を続けるJNNのクルーは、アフガニスタン第二の都市・カンダハルでタリバン最高幹部の一人・ムッタキ外相代行との接触に成功。日本メディア初の単独インタビューに応じたムッタキ外相代行に「女性の権利」や「貧困」「薬物中毒者」などの問題について聞きました。
(聞き手:須賀川拓 中東支局長)(2022年8月20日公開記事)

タリバン ムッタキ外相代行:20年前のタリバン政権時代に閣僚をつとめ、前アフガン政権やアメリカとの和平交渉の際タリバンの代表団を率いていた。

■「私たちは自らの国を統治できています」

ーータリバン政権発足から1年が経ちました。これまでにあなた方が行った功績や、この先やらなければならないと思うことを教えてください。

この1年、私たちは自らの国を統治できています。自分たちの予算内でそれを行っています。約80万人の職員の給与を支払い、生活を維持できています。

特に好転していると感じるのはアジア諸国における貿易に関してです。数千人以上の職員が継続して働いているからこそ可能になったことです。そうした職員の働きにより、様々な役職の者が再びカブールに戻ってきています。

ーー政権発足から1年でいまだ1か国もあなた方の国を承認していないのはなぜだと思いますか?また今後、その問題を解決するために何ができると思いますか?

国土を有し、国民がいて政府があり、治安を維持しているような国がある場合、その国は承認されるべきです。私たちは逆に聞きたい。なぜそうした国家が承認されないのでしょう。承認されるべきです。

■女性の権利「問題として取り上げられるレベルのものとは認識していません」

ーーここ最近、西側メディアは女性の権利について報じていますが、私はこの国の貧困と困窮を目にして「偽善」と感じることもあります。西側メディアがこの国の貧困と困窮を知りながら、女性の権利について報じていることについてあなたはどう思いますか?

思い出してほしいのは、この20年間アフガニスタンのおかれた状況が絶望的だったということ。私たちはアフガニスタンに支配の手が及んでいないことをうれしく思っています。西側はこうした問題を持ち上げて人々の関心を集めようとしているようです。

私たちは9万2000人の女性の職員を抱えています。その内1万4000人は厚生労働省で働いています。多くの部署で女性が活躍しているのです。つまり問題として取り上げられるレベルのものとは認識していません。

ーー一方で、この長い戦争でこの国の多くの命が失われました。特に多くの男性の命です。多くの家庭には夫や息子がいません。女性の権利を守ることは、そうした人々の命を守ることよりも重要ではないように聞こえますが、実際には女性の権利を守ることは男性がいない家族を守ることに直結するのではないでしょうか?

私たちはアフガニスタンの女性の権利を認識しています。たとえその女性たちがイスラム国家に対し批判的であったとしても、夫が亡くなっているような状況におかれているなら、私たちは彼女たちを受け入れています。私たちは彼女たちに同情し、家計を支える様々な支援を行います。それに女性たちはそこまで問題視していないでしょう。というのも、彼女たちはアフガニスタンの現状を理解しているし、彼女たちもムスリムです。私たちは女性の権利を守るために、具体的な政策を実施できるよう努力しています。