スイス、フランス、イタリアなど7カ国にまたがり、「ヨーロッパの屋根」と呼ばれるアルプス山脈。

ドローン撮影で浮かび上がる、山肌の一本の線
その峰に「マジックライン」という、30キロ以上もつづく一本の線が刻まれています。もちろん自然にできたもので、このラインの存在によって世界遺産になったのがスイスの「サルドーナ地殻変動地帯」です。

あまり聞き慣れない地名ですが、スイス東部の3万ヘクタール以上もある広大なエリアで、標高3248メートルのリンゲルシュビッツなど3000メートル級の山々がそびえます。さらに青い湖も点々とし、麓の谷間には「アルプスの少女ハイジ」に出てきそうな牧歌的な村があり、知られざる絶景地帯といえます。
番組では、まず標高2849メートルのチンゲルホルンという山にあるマジックラインをドローンで撮影したところ、確かにくっきりと山肌に一本の線が走っています。

そこから延々と横につづき、10キロ以上離れた麓では断崖を横切るラインに触ることも出来ました。

下の地層が「新しい」…並びが逆転した理由
このラインを境にして上下で地層が違うのですが、不思議なことに下の方が新しく、上の方が古いという通常の地層とは逆の並びになっているのです。下は約4000万年前の地層、上は約2億5000万年前から3億年前の地層。地層の時代が逆転していることは19世紀初めに発見されたのですが、なぜこんなことが起きたのか理由はずっと分からず、まさに魔法にかけられたようなラインだったのです。
この地層逆転の発見から100年以上経って、世界の大陸は少しずつ移動しているという「大陸移動説」がドイツの学者、アルフレッド・ウェゲナーによって発表されます。当時は「大陸が動くなんて妄想だ」と嘲笑された学説だったのですが、マジックラインがなぜできたのかはうまく説明することができました。