当事者の雇用だけではなく「従業員の理解」も促進

都内で介護事業を行う会社『more』では、業界の人材不足を見込んで、3年前にLGBTQの雇用促進を表明した。いまでは当事者から、毎月5人ほどの応募があるという。

倉田広志代表
「今後の人材難に向けて、採用リソースとして、何かチャンネルがないかというところで、LGBTQというアンテナが立った。介護の仕事の本質っていうのが、その方の尊厳を守るとか、その人らしさを守るっていうのが大前提にありますので。LGBTQ当事者の方々のその人らしさを大切にするというのも会社として当然守っていかなきゃいけないことだなと思ってます」
カミングアウトする範囲は、当事者の希望を尊重している。そのため、撮影に入ったこの現場に当事者がいるかどうか、私たちにも明かされていない。人事担当者によれば、実に従業員の1割にあたる12人がLGBTQと表明しているという。

この会社で取り組んでいるのが「従業員の理解促進」だ。カミングアウトをした時にどう対応してほしいのか、など当事者たちの意見を集約し、社内報で発信している。
実際にカミングアウトを受けた従業員は…

カミングアウトを受けた従業員
「どう接したらいいかなとか、そこで初めて気づくこともありましたし、それぞれ実際話してみると、気をつかわないのが一番なのかなというのはすごく感じました」

倉田広志代表
「第一は自分自身の理解というのも深まったな、と思います。導入し始めたときには、こういう質問はいけないかなとか、面接のときに何に注意しようとか、すごく悩んだんですけれども、当事者の方と接する機会が多くなっていくと、当然なんですけど、みんな一個人で人なので、個性の延長線って考えたら、そんなに構える必要ないんだなというのが現時点での自分の印象ですね」
「実際カミングアウトされたらどうすれば…」 企業の“環境作り”をサポート
LGBTQ向けの求人サイトを運営する『JobRainbow』
サイトには、当事者に“フレンドリーな職場環境”を提供している企業、およそ500社が登録されている。

ジョブレインボーの代表は、ゲイであることを公表している星 賢人さん。
この日、職場の差別に悩む当事者たちが相談に訪れた。
タイチさん(職場でゲイを公表)
「(前職では)会話の中で“彼女いるの?”とかっていう言葉をずっと浴びせられてきて、自分が大切に思っている人のことも(女性に)“変換”して伝えなければいけないという、苦しさみたいなものを感じてきたというのがありました」
JobRainbow 星賢人 代表
「例えば、就活生で内定がもらえた会社に、ゲイであるとカミングアウトをしたら、内定を取り消されてしまって、かなり後半の時期に、急いで就活を再開しなければならなくなってしまった方が、駆け込んできたりする」

ジョブレインボーでは、企業が、当事者のための“環境作り”をするサポートも行っている。
この日、星さんは、オフィスの事務用品などを作る『イトーキ』の社員から相談を受けた。
イトーキ人事部 石戸ひかるさん
「もしカミングアウトされたら、実際本当にできるのかな?どういう対応を、自分は実際できるんだろうっていう」

JobRainbow 星賢人 代表
「別にLGBTという人がいるんじゃなくて、LGBTの中にも、100人いれば100通りのコミュニケーションがあるので、そこは皆さんに肩肘張っていただかずに、人として受け入れたいなという気持ちで、コミュニケーションをしてもらうのが、一番大切かなと思っている」
LGBTQへの理解のためには、「次世代を意識すること」が重要だという。

イトーキ人事部 石戸ひかるさん
「職場よりも子供たちとか学校の方が、どんどんそういったことが進んでいて、追いつかないといけないなと」

JobRainbow 星賢人 代表
「これからの新しい世代というのも、こういった教育を当たり前に受けてきてから、入社する方も多分増えてくると思うんですね。そういったときに、やっぱり会社として取り組みを、しっかりできている、コミュニケーションがちゃんとアップデートされている、ということが、その人たちが働いているときに働きがいを感じたりだとか、この会社はやっぱり素敵だな、と思ってもらえるきっかけになるかなと思うので、次世代の視点を考えてくださっているのがすごく嬉しいですね」