研究の対象は絶滅種を含むシカ類

研究の対象となったのは、本土に生息する4種類のシカ類と離島に生息する4種類のシカ類です。サンプル数は54個体です。「本土集団」は北海道・本州・九州・四国に生息する、ヤベオオツノジカ、エゾシカ、ホンシュウジカ、キョン、「離島集団」はケラマジカ、ヤクシカ、リュウキュウジカ、リュウキュウムカシキョンです。このうち、ヤベオオツノジカ、リュウキュウジカ、リュウキュウムカシキョンは絶滅しています。
それぞれの生息期間は文献などから推定できます。例えば、「ケラマジカ」は400年前に島に持ち込まれたシカなので、島に生息している期間は400年前から現在までの400年間、「ヤクシカ」が生息する島は2万年前から10万年前に陸から分離して誕生したので、島に生息する期間は現在までの2~10万年間。「リュウキュウジカ」は沖縄本島に150万年前に大陸から移入し2万年前まで生息していたとされており、沖縄本島は150万年以上どこの島ともつながってないことから、リュウキュウジカは離島で約150万年間生息したと考えられます。
研究の手法は恐竜研究で用いられる「ボーンヒストロジー」

研究の手法は恐竜研究で用いられるボーンヒストロジー(骨組織学)です。骨を切断し、薄くスライスすることで、内部の組織を観察し、骨の成長様式を推定します。

多くの動物の骨には「成長停止線」が刻まれます。木の年輪と同じように1年ごとに刻まれることから、これを分析することで、年齢を推定できます。また、成長停止線の密度(線と線の間)を分析することで、年齢に応じた成長の速度が分り、その個体の成長速度が推定できます。この手法を用いることで、従来は推定が困難であった、絶滅動物の成長速度、年齢、生活様式ながを推定できます。