全長12m…異様な迫力「ブラック・ビューティー」

カナダ・アルバータ州にはロイヤルティレル古生物博物館という恐竜化石については世界最大級の博物館があり、その展示の目玉が「ブラック・ビューティー」と呼ばれるティラノサウルスの全身の化石です。全長12メートルもある骨格は、マンガンが染みこんだために真っ黒で異様な迫力があり、それが名前の由来になっています。

ティラノサウルスの全身骨格 通称ブラック・ビューティー ※ロイヤルティレル古生物博物館に展示

アルバータ州では、他にもアルバートサウルス、ゴルゴサウルスなどティラノサウルスの仲間(ティラノサウルス科)の化石がいろいろと発見されていて、生態に関する研究も進んでいます。

ティラノサウルスの顔の傷(復元図)

「咬み傷」から読み解くティラノサウルスの性別

その最新のものが、ティラノサウルス科の恐竜の顔に残った傷。ティラノサウルスの顔には同じティラノサウルスによるものと思われる咬み傷が多々あることから、「オス同士がメスをめぐって争い、互いの頭をガブガブ咬み合っていたのではないか」という新説が登場しています。繁殖可能であろう6歳以降の成長したティラノサウルスから、咬み傷が多く見つかっていることが論拠になっています。

ティラノサウルス科の顔に残る咬み傷※ロイヤルティレル古生物博物館に展示
咬み傷があるティラノサウルス科の恐竜の顔の化石※ロイヤルティレル古生物博物館に展示

実は恐竜の性別は化石からでは判断することが難しいのですが、この説が正しければ「顔に咬み傷があるのがオス」と判別可能にもなるため注目されています。実際、咬み傷は見つかった顔の化石の約50%にあり、これも片方の性別の恐竜、つまりオスの恐竜のものと推定される要因です。