「デモンストレーション目的の方が強いんじゃないか」

小川彩佳キャスター:
ロシアの軍事安全保障政策に詳しい小泉悠さんにも加わっていただきます。まだまだわからないことが多いという中で、手がかりとなりそうな映像があります。小泉さん、この攻撃の映像からはどんなことが見えてきますか?

東大先端研 専任講師 小泉悠さん:
映像からも意外と難しくて、見た感じで言いますと、そんなに速くない。恐らく時速100~200kmだと思うんですよ。

翼の生えたドローンが突っ込んでいくということなので、このぐらいの飛行性能を持つドローンは、大体どこの国の軍隊も持っている。

ロシア軍も持ってますし、ウクライナ軍も持ってます。最近はネットでも買えるものがあるという話なので、これだけで誰がやったということは、なかなか言えないのではないかと思います。

小川キャスター:
そして細かく見ていきます。クレムリンの屋根ですが、何か損傷があったり、焦げているなどのことは見受けられませんよね。爆発ですが、屋根に当たる前に、あったようにも見えます。これはどういう状況が考えられるのでしょうか。

東大先端研 専任講師 小泉悠さん:
もしもこれが意図的に計算されたものであれば、この座標に来たときに爆発するんだよ、というふうに事前に教えてあって、意図的に爆発したのか。

本当はもうちょっと奥まで突っ込んで行きたかったんだけども、何らかの理由でロシア側の妨害に遭って爆発したか、どっちかだと思います。

ただ、いずれにしてもご指摘のように、あまりにも損傷が少ないですよね。ロシア側が言うように、本当にプーチン大統領の暗殺を狙うためにこういうものを放ったのであれば、もう少し高性能な軍用爆薬を積むんじゃないかと思うんですけどもね。

どうも、パッと燃えるだけでほとんど被害も与えないということなので、誰がやったにせよ、デモンストレーション目的の方が強いんじゃないかという印象を持ってます。

ロシアでも、ウクライナでもない、第三者という可能性

小川キャスター:
そして動画を見ますと、赤い丸が付いているところに、2人の人影も見えるんですね。この人物についてはどんなことが考えられるのでしょう。

東大先端研 専任講師 小泉悠さん:
本来この丸屋根の上に、旗竿があって、旗竿の旗を降ろしたり、下げたりする作業をするために付いたはしごなんですね。

なのでここに人間がいてもおかしくはないんですけども、夜中の2時半なので、やっぱりこの時間に人間がいるのは不自然かと。

もしかするとこの画像は2機目のドローンが突っ込んだところかもしれなくて。1機目が既に突っ込んでるので、何か様子を見に行ったという可能性もあります。

あるいはドローンが飛んでくるということがわかったので、大急ぎで対空ミサイルなどを抱えて登ってるのかもしれません。これもよくわかりませんね。

小川キャスター:
断定できることがない中で、結局誰が攻撃をしたのか、その可能性としては、ウクライナによる攻撃、ロシア政府の自作自演、さらにはロシア国内の反体制派などが指摘されています。小泉さん、今の時点では、どのようにご覧になりますか?

東大先端研 専任講師 小泉悠さん:
これもわからないばかりで恐縮なんですけども。この中のどれが一番怪しいということを言える材料がないんですよね。

ただ私は最初、ロシアによる自作自演の可能性が割とあるんじゃないかと思っていたのですが、一夜明けてみると、ほとんどロシア政府からこの件を強硬に打ち出そうとか、何かプレイアップしてロシアの政策の材料にしようという様子があまり見えないですよね。

もっと大々的にテレビなどを使ったり、プーチン大統領が演説をしたりなど、もうやるんだ、こんなひどいことをされたんだから、というふうにやってもおかしくないんですけど。

そういう様子がどうも見えないというところを見ると、ロシアの自作自演説はどうかなと私は1日経って思い始めています。

他方でウクライナがやるにしても、結局ロシアを激昂させるだけであまりいいことがない。もしかすると、ロシアでも、ウクライナでもない、第三者という可能性も考えなければいけなくなってきたかと思ってます。