2022年7月に安倍晋三元総理を銃撃・殺害したなどの罪に問われている山上徹也被告の初公判が、きょう10月28日午後2時から奈良地裁で行われています。

 山上被告は、か細い声で「すべて事実です。間違いありません。法律上どうなるかは、弁護人に委ねます」などと、起訴状記載の事実を認めました。

弁護人も殺人罪の成立は認めましたが、銃刀法違反や武器等製造法違反については、罪の成立や適用罪名を争う姿勢を示しました。

 山上徹也被告は2022年7月、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、参院選候補の応援演説を行っていた安倍晋三元総理(当時67)を、手製のパイプ銃で銃撃し殺害したとして、殺人などの罪に問われています。


▽“母親の多額の献金で破産”旧統一教会への強い恨み

 逮捕後の取り調べで山上被告は、安倍元総理殺害を認めたうえで、以下のような趣旨の供述をしていました。

 「母親が旧統一教会にのめりこみ、多額の献金をして破産した。難病の兄が十分な治療を受けられず自殺した。自分も大学に行くことができなかった」
 「旧統一教会の幹部を殺害しようと考えたが、接触が難しかった」
 「旧統一教会と安倍元総理につながりがあると思った」

 旧統一教会への強い恨みと、安倍元総理と旧統一教会との関連が被告の中で結びつき、凶行に及んだとみられています。

 被告のものとみられるツイッターには実際に、旧統一教会への憎しみの感情が赤裸々に綴られていました。

 (山上徹也被告のツイッターでの投稿より)
 「我が家から全財産を奪い、母に家族を騙してそれを秘匿するよう諭した」
 「オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた。統一教会の本分は、家族からアガリを全て上納させることだ」

 安倍元総理についてもたびたび言及されています。

 「オレが憎むのは統一教会だけだ。結果として安倍政権に何があってもオレの知った事ではない」
 「岸(信介元総理)が招き入れたのが統一教会。安倍が無法のDNAを受け継いでいても驚きはしない」

 山上被告がどのタイミングで安倍元総理殺害を決断したのかは定かではありませんが、事件前日には、安倍氏の遊説先である岡山を訪れていたことも確認されていて、計画性がうかがえます。

 凶器についても、用意は周到でした。犯行に使われた銃は、2つの銃身を備えた手製のパイプ銃でしたが、被告の自宅からは他にも複数のパイプ銃や黒色火薬が押収されました。山上被告は、銃の改良を重ね、事件前日にも、旧統一教会の施設が入るビルに向かって“試し撃ち”を行ったとみられています。


▽弁護人は銃刀法違反と武器等製造法違反で罪の成立など争う姿勢

 公判前整理手続きは2年におよび、ついに初公判を迎えることになりました。

 山上被告は、▽殺人▽銃刀法違反▽火薬類取締法違反▽武器等製造法違反▽建造物損壊の5つの罪に問われています。

 弁護人はこのうち、▽安倍氏を銃撃して殺害した殺人の罪▽黒色火薬を製造した火薬類取締法違反の罪▽銃撃前日に、旧統一教会の施設が入るビルに向かって“試し撃ち”をした建造物損壊の罪については起訴内容を認めるとしました。

 一方で、▽パイプ銃を製造した武器等製造法違反や▽銃刀法違反の罪については、罪の成立や適用する罪名を争うとしました。

 また、母親の旧統一教会への信仰・献金が家庭に与えた影響などを指摘し、量刑を判断する上での情状酌量を求める構えです。


▽検察側の冒頭陳述を両肘ついて聞く場面も…

 検察側は冒頭陳述で、「著名な人物を襲撃すれば、旧統一協会への注目が集められると重い、安倍氏への襲撃を決めた」「聴衆に被害が出てもおかしくなかった。元総理大臣、現役の国会議員が手製銃で殺害されたことは、戦後史において前例を見ない極めて重大な結果だ」と指摘。

 母親の旧統一協会への信仰が事件の背景にある点は認めつつも、強い表現で被告の犯行を糾弾しました。

 検察側の冒頭陳述の場面では、両肘を机について聞く山上被告の姿もありました。


▽被告の母親も証人出廷へ妻・安倍昭恵さんも被害者参加制度を利用し…

 公判は予備日を除くと、10月28日の初公判を含め計16回。
関係者によると、山上被告の母親も、弁護側請求の証人として出廷する予定です。

 また、被害者参加制度に基づき、安倍元総理の妻・昭恵さんの心情が記された書面を、代理人弁護士が読み上げる予定だということです。

 判決は、来年1月21日に言い渡されます。