新学期がスタートして1か月。新しい学校やクラスに慣れてきたという子どもたちの一方で、環境の変化に不安や戸惑いを感じている子どもたちもいるのではないでしょうか。
ニューズナウではきょう3日とあす4日、学校に行きたくても行けない「繊細な子どもたち」の不登校について特集します。
HSCという言葉をご存じでしょうか。HSCは「Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)=非常に敏感な子ども」の頭文字をとった言葉で、30年ほど前にアメリカの心理学者が発表した概念です。
日本でも精神科の医師からHSCと言われる子どももいます。
ただ、HSCは病気や障害ではなく、生まれ持った「気質」です。人一倍、敏感な子どものことで、「繊細さん」や「繊細くん」とも呼ばれています。
5人に1人が該当するとされ、集団生活が苦手なため、不登校につながる可能性も指摘されています。
HSCの子どもたちが通っている鹿児島市のフリースクールを取材しました。
鹿児島市のフリースクール「やさしいハリネズミの楽校 鴨池校」です。不登校の子どもたち向けに、学習や体験活動などのプログラムを提供しています。
ベッドがある個室で過ごしているのは、中学1年生です。
(中学1年生)「ベッドとかもふかふかして、家のソファーと同じ。家にいるような感覚で楽しんでいる。(Q.学校とは違う?)違う。落ち着ける」
集団生活を送る学校は、安心して過ごせる場所ではなかったといいます。
(中学1年生)「(Q.学校は行きづらいときがあった?)大人数が苦手だったから、友だちとも仲良く遊んでいたけれど。最初は(小学)1年生から給食もあまり食べられなくて、お腹が痛くなって。ずっと何だろうと思いながら、ときどき行っていた」
HSCと気づいたのは小学6年生のとき。自分の「敏感な気質」を客観的に捉えられるようになり、「困りごと」にどう対応したらいいのか分かるようになったといいます。
(中学1年生)「当事者になってみると、こんな目線かなと。新しい感じになった。自分の苦手な場所が分かったから、そこを避けて人数を少なくして遊んだら、今は昔より楽しい」
こちらの小学4年と2年の姉妹。フリースクールを運営する上川知子さんの娘たちです。学校に「行きたくても行けない」理由の一つが、新型コロナへの不安でした。
(姉妹の母・上川知子さん)「3年前にコロナが始まったとき、学校には行っていたけれど、『自分が(もし)コロナに感染して、それをおばあちゃんにうつして、おばあちゃんが死んじゃったらどうしよう』と。先の先の先まで考えて(子どもたちが)心配していた」
5人に1人が該当するといわれるHSCですが、社会の理解が広がっていないと感じています。
(姉妹の母・上川知子さん)「まだまだ認知と理解が足りない。どういう気質を持っていて、どう対応したらスムーズに生活できるか、生きやすいか、ということをまずは家族が知ることが大事」
認知度が不十分だというHSCにはどんな特徴があるのでしょうか。心理学者たちが作成したチェックリストの一部を紹介します。
・驚かされるのが苦手
・親の心を読む
・たくさんのことを質問する
・完璧主義
・誰かのつらい思いに気づく
・うるさい場所を嫌がる
などです。
チェックリストは23項目あり、13項目以上が当てはまればHSCの可能性があると言われています。ただ、一つや二つでもその度合いが極端に強ければ、HSCの可能性があるそうです。
例えば、転校して給食の配膳のルールが変わったことに戸惑ったり、一度、忘れ物をしてしまうと、登校への不安が高まるケースもあるようです。
―Q.HSCの子どもたちは学校に通えなくなるケースもあるんですね。
県教育委員会によると、年間30日以上学校を欠席した不登校の子どもの数は、新型コロナの感染拡大前だった2018年度は2679人でしたが、2021年度は3688人と、前年度より2割以上増え、過去最多となりました。
不登校の理由は小学校、中学校、高校いずれも「無気力・不安」が30%から40%を占めましたが、5人に1人の割合ともいわれるHSCが要因になるケースがどの程度含まれるのか、実態は分かっていません。
県内の学校で不登校などの悩み相談に応じている臨床心理士は、、実態を把握して支援をすべきと指摘しています。
(スクールカウンセラースーパーバイザー=臨床心理士 児玉さらさん)「一つは集団が苦手。人に対する反応がひとつはある。(登校への)ハードルは高いが、何も手を加えず『支援しないで学校には来なくていい』と放っておくのは違う」
―Q.「HSCの子どもたちへの支援が必要」と話していましたが、学校現場ではどんな取り組みが行われていますか。
詳しい実態が分からないHSCに特化した支援はないものの、集団生活に不安を感じる子どもたちのために、教室以外の居場所を校内に確保したり、自宅でのタブレット学習を支援するなどの対応を取っている学校もあります。
ただ、不登校の子どもを支援する教員の配置も含め、保護者からは「人員の確保が追いついていない」という声も上がっています。
次回は、フリースクールを運営している保護者の思いや県内の現状をお伝えします。
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