世界遺産の中で最も有名なもののひとつが、ペルーの「マチュピチュ歴史保護区」です。南米・アンデス山脈、標高2400メートルを超える高所に築かれたインカ帝国の遺跡で、「空中都市」や「天空遺跡」と呼ばれます。知名度も高く、「行ってみたい」ランキングでも必ず上位に入る人気の世界遺産。

番組でも最近、インカ帝国のかつての都でやはり世界遺産の街・クスコから、マチュピチュまで走る鉄道を撮影しました。列車はアンデス山中の美しい渓谷に沿って3時間かけて走り、その途中途中にインカ文明の遺構が点在しているという、遺跡好き・鉄道好きにはたまらないコースです。

ところがこの撮影の後、今年1月から2月の間、マチュピチュは閉鎖されてしまいました。ペルーの反政府デモが首都リマを中心に激化した余波で、混乱を避けるため観光客の受け入れをストップしたのです。もしロケの時期がもっと遅かったら、撮影できなかった可能性もありました。
マチュピチュ初のドローン撮影は「世界遺産」
「世界遺産」は今年で放送28年目になるのですが、実はマチュピチュは番組にとって節目節目で登場してきた不思議と縁のあるところです。
まず映像面でエポックメイキングだったのは2016年のこと。遺跡を管轄するペルー文化省は、長らくマチュピチュでの空撮やドローン撮影の許可を出さず、世界中のどのメディアも空から撮ることが出来ない状態でした。そんな中、ダメで元々と何度も撮影申請しているうちに、文化省の担当者が「ドローンの腕前次第。試しに一度、見せてもらおう」と言いだし、別の遺跡で撮影技量のテストを受けることになったのです。番組の中でも一番ドローンに習熟しているカメラマンを送り込んだところ、なんと合格!世界で初めてとなるマチュピチュのドローン撮影を行うことが出来たのです。


これまで見たことのない低空からの撮影アングル。遺跡が断崖に挟まれた山の尾根に築かれていることや、それぞれの建物や石垣の構造がよくわかる画期的な映像でした。

「世界遺産」第一回放送も「マチュピチュ歴史保護区」
また1996年4月、番組の第1回放送で取り上げたのも、この「マチュピチュ歴史保護区」でした。まだ世界遺産という言葉も普及していなかった頃、映像もハイビジョンではなく画角は4対3のアナログでしたが、「世界遺産 それはかけがえのない地球の記憶」というフレーズとテーマ曲「ソング・オブ・ライフ」で始まるオープニングはいま観ても、ワクワクする期待感に満ちています。

「グッバイ・ボーイ」との20年越しの物語
このとき番組の最後に紹介したのが「グッバイ・ボーイ」と呼ばれる少年でした。