前田育男 マツダ デザイン本部シニアフェローブランドデザイン
「一番のこだわりはストーリー性です。マツダがこれまで
培った100年の歴史や商品。技術に込めたもの作りへの思いなどマツダの挑戦の歩みをエピソードと実写を合わせて1本のストーリーとして感じていただきたいという思いで設計をした。

もう一つのこだわりは、空間表現の作り込みです。展示は10のゾーンで構成していますが、少々複雑な空間の特徴を生かして、時代、領域に合わせてレイアウト、色合い、照明など、エリアごとの世界観に取り組みました。同時につなぎの部分を大事にして、結果は一つの物語として完成する空間構成としています。これはマツダのすべてのデザインメンバーで企画演出を行った作品です。

特徴的なゾーンを説明します。

玄関はまわりの色を暗めに抑えた。少し秘密基地っぽいワクワクしてもらえる場所とした。そしてマツダの新世代店舗やモーターショーブースと同様、最新のブランドサイズに合わせたインテリア。車が綺麗に見える照明、温かみを感じさせる素材で構成し、マツダの世界に皆さんを暖かくお迎えする空間とした」

「いよいよツアーが始まります。我々がタイムトンネルと呼んでいる渡り廊下を通ってマツダの創業時に戻ってもらいます。歴史の幕あけを感じさせる静かで落ち着いた空間で、『工業で世界に貢献する』という創業者の真剣な決意。我々の『もの作りの原点』を感じていただく。

次に、マツダのクルマ作りの夜明けを感じてもらえる明るい空間へ移動します。マツダの車づくりの聡明期から弧を描くように順を追って、各時代を代表し、新たな価値作りに挑戦し続けたエポックメイキングのプロダクトたちをお見せします。

そしてその空間の最後に現れるのはモータースポーツのコーナー。マツダのもの作りスピリットの象徴ともいえる飽くなき挑戦の歴史で、モータースポーツを通じてその独自の技術で世界と戦ったクルマたちをご紹介します」

「次のコーナーは、最新技術をお見せする場所です。研究ラボを彷彿とさせる、白を基調としたクリーンでシンプルな空間としました。車作り対するエンジニアの創意と工夫、その独創性を感じてもらいたいと思います」

「そして(アッセンブリーライン)組み立て工場の見学。これは他のミュージアムにはないユニークな特徴だと思います。実際の物作りの現場を、臨場感を持って目にすることができるエリアですし、車好きにはたまらない場所です。

最後はデザイン中心の未来展示のコーナーです。過去の展示にはなかった新しいコーナーで、我々が今回とても力を入れたところにあります。左脳から右脳に意識を変えて、落ち着いた空間の中で、匠の手で作り込まれたデザインの美しさ、その先にある未来を感じてもらいたい。

最後に一貫したストーリー作りという点でこだわったその他2点」

「 一つがスタッフのユニフォーム、もう一つはグッズショップです。グッズショップは自然に財布の紐が緩む、魅力のある場所になっていれば、成功です」

「ミュージアム全体の注力ポイントについて説明した。時代領域を超えたマツダの飽くなき挑戦の精神を、このミュージアムを通じて感じていただければ幸いです」

ミュージアムの一般公開は5月23日から。5月16日から予約受付を開始するということです。