値上がりが続き世間の関心が高まる卵。
長野県生坂村に夫婦で営む小さな養鶏場があります。
取り組むのは、動物にも環境にもやさしい地域循環のスタイルです。

県の中ほどに位置する生坂村。
およそ1700人が暮らし、県内の市町村の中で5番目に面積が小さな村です。
(記者)「こんにちわ」「まず足を石灰につけてもらって」


村に去年(2022年)開業した「にわにわ自然養鶏」。


千葉県出身で、村の集落支援員も務める佐久間拓郎(さくま・たくろう)さんと、妻で福岡県出身の由輝子(ゆきこ)さんが営みます。


■佐久間さん「ここ最近ですね、ニワトリがかわいいなと思えるようになったのも…養鶏を始めてから」

飼育しているのは、純国産の鶏「あずさ」と「岡崎(おかざき)おうはん」。


自由に動き回れる「平飼い」で30羽余りを飼っていて、平均すると、1日に25個ほどの卵が産まれます。

卵は、村を代表する山=「京ヶ倉(きょうがくら)」にちなんで、「きょうがくらん」と名付け、ブランド化を目指します。



パッケージのデザインを手がけたのは由輝子さんです。
■由輝子さん「絵本のような親しみやすさ 安心感みたいなものが描かれたらいいのかなと思って」

卵は、黄身の色が薄く甘味があるのが特徴といい、佐久間さん夫婦は、村の新たな特産品になればと考えています。

掲げるのは、「地域循環型養鶏」というスタイル。

ニワトリが食べる飼料を見せてもらうと…。

■佐久間さん「米ぬか おから のこぎりくずを混ぜます」

朝と夕に与える飼料は、米ぬかやおからなどを発酵させて手作りします。


■佐久間さん「発酵したところに古米ともみ殻、くん炭を入れて完成」

飼料のほとんどは、村の中で調達しています。
この日、佐久間さんがやってきたのは、村にある精米コーナー。


■佐久間さん「ここに米ぬかがありまして、日本中どこでも手に入るものですが それが容易に手に入ることも養鶏をやっていく中でとても大事で」

こちらは、村の学校給食センター。

調理で出た野菜の皮や出汁を取った小魚を提供してもらっています。

■佐久間さん「これがいりこですね これが本当に(鶏の)大好物ですね 動物たんぱくも必要でして これを食べるといい卵を産みます」

こうして作った飼料を与えると…

■佐久間さん「おとなしくなるんですよ」


廃棄されてしまっていたものも、ここでは、貴重な資源。
食品ロス削減にもつながり、飼料代の高騰の影響も受けません。
佐久間さんの養鶏場の存在は、次第に知られるようになり、飼料になりそうなものがあると、村のあちらこちらから連絡が入るようになりました。
■佐久間さん「ふとしたときに携帯が鳴って『佐久間くん、おからがあるけど持っていかないか』とか『古米が出たけど鶏は食べるかな』って。人とのつながりの濃さみたいなものを最近感じている」

2月には、「ニワトリにあえる」をコンセプトに直売所をオープン。
営業は、毎週土曜日のみで、卵を1個70円で販売します。


悩ましいのが、小さな養鶏場だけに、今は日によってはお客さんの希望に答えられる十分な卵を確保できないこと。
新たに30羽ほどのひよこも飼育を始めました。
順調に育てば、半年余りで卵を産むようになります。


■佐久間拓郎さん「生坂ならではの時間というか、豊かさってものを感じていまして 人間も 鶏も 自然も 負担をかけずに いかに幸せに養鶏ができるかがテーマの1つです」



食の大切さを伝えたい。
村の人々の応援を受けながら、佐久間さん一家のニワトリたちとの暮らしが続いていきます。
