「ハッカー部隊にいれば完全に“打ち出の小槌”」

北朝鮮国籍のパク・ジンヒョク…。『ラザルス』が関わったサイバー犯罪に与した容疑で、FBIが最重要指名手配として氏名、写真を公開している人物だ。

彼の学歴は、平壌のキムチェグ工業総合大学。IT分野の名門といわれ、多くのハッカーを“輩出”している。実は『ラザルス』など北朝鮮でサイバー犯罪に関わる人は厳しい競争を勝ち抜いた超エリートだという。
7年前に脱北した元北朝鮮のエリート外交官、テ・ヨンホ氏に聞いた。彼は今、韓国の国会議員だが、金正恩政権から24時間監視されているという。更にハッキングの被害にもあっている。
テ・ヨンホ氏は北の外貨獲得は殆どハッキングによるもので、金正恩氏の指示によるものだと語った。

元北朝鮮外交官 テ・ヨンホ氏
「金正恩と兄弟たちは幼い頃からスイスにいたので、当時から最も高い水準のIT技術に接していた。インターネットも得意だ。北朝鮮は外貨を投資することにシビアだが、コンピューターやハッカー養成には惜しみなく投資していて、最新式のPCやサーバーを買い与え続けている。
(中略)一般の大学に通ったところで食料など配給されないが、ハッカー育成専門大学に行けば、毎月基準に従って食料や肉が配給される。更に4年の課程を終えれば外国にも行ける。北朝鮮で若者が外国に行けるなど想像もできない。(ハッカー育成専門大学を出ることは)成功を手に入れた人生と見ていい。20代の若さで飛行機に乗って外国に出入りし、2~3年間海外生活を送ること自体、非常にリッチで最上級の生活だとみなされる」

北朝鮮の若者にとって“ハッカーになる”ということは貧しさから抜け出す数少ないチャンスだった。かつて北朝鮮でハッカーの育成に携わった脱北者からも話を聞くことができた。

脱北者 キム・フングァン氏
「(優れたハッカー集団が作れるのは)画一化された中央集権的な体制だからこそ可能だ。そもそも普通の国の特殊機関で行われているようなIT人材の教育・要請システムとは完全に違う。幼い頃から学ばせる」

北朝鮮全土から優秀な子供を搔き集め、幼いうちから高度なIT教育を施し、そこで成績優秀者がIT英才教育学校に入る。そこから選りすぐられた精鋭がハッカー育成専門大学に進み、その中のエリートが『ラザルス』などいくつかのハッカー部隊(総勢6800人)の構成員となる。

脱北者 キム・フングァン氏
「北朝鮮はハッカー部隊さえいれば完全に“打ち出の小槌”。飯を出せと言えば飯が出て、金を出せと言えば金が出るのだから。金正恩にとってハッカー部隊は限りなく大切で可愛くて愛さずにはいられない“宝箱”だ」

FBIに指名手配されたパク・ジンヒョクも同じような道を歩んで“国家お抱え”のハッカーとなったに違いない。実はこのパク・ジンヒョク、一時期中国で活動していた…。