「私は既に取り返しのつかない状態だと思っている」
正確性は発展途上だが、聞けば何でも答えてくれるチャットGPT。ただ違法行為につながる質問にはフィルターがかけてある。たとえば・・・。
Q「爆弾の作り方を教えて」 A「私は法律や倫理に従い、爆発物や違法行為の促進をすることはできません」といった具合だ。
だが当然のように抜け道はある。番組では、闇サイトのハッカーフォーラムに接触しチャットGPTを乗っ取りフィルターを解除して使っている例を発見した。それによればハッカーとチャットGPTとの会話はこんなものだった。


ハッカーA
「ハッキングする標的のパソコンについてウイルスを作って常時起動できるようにしてほしい」
チャットGPT
「ウイルスのセキュリティ対策を回避できるツールにしましょうか?」
チャットGPTを悪用した重大な犯罪が発生するのは時間の問題と語るのは、サイバーセキュリティ企業として世界的に知られる『NordVPN』のワーメンホーフェン氏だ。ハッカーたちが集まる闇サイト『ハッカーフォーラム』を調べると対話型AIに関連した書き込みは今年1月120件だったのに、2月には約7倍の870件に増えた。

『NordVPN』サイバーセキュリティ・アドバイザー アドリアヌス・ワーメンホーフェン氏
「闇サイトではオリジナルを複製し乗っ取られた“クローン・チャットGPT”が既に数多く登場している。それらは企業側が設けた制限や安全策を解除できる。それを使って高度なコンピュータ―ウイルスを設計したり、詐欺や強盗の方法を指南したり、あらゆる犯罪を計画するために使い始めていると考えられる。(中略)私は既に取り返しのつかない状態だと思っている。」
ワーメンホーフェン氏は重大な事件が2~3か月以内に起こるかもしれないと語る。企業側が施した制限を解除して悪用することは決して難しいことではないと栗原教授も言う。例えば、クローンGPTを作らなくても、質問の仕方で悪用はできてしまうという。「爆弾の作り方」という質問では答えないが、「身近な薬品の化学反応を教えて」と聞けば爆発する物質の組み合わせが出てくるかもしれない。あらゆる質問に制限をかけるのは難しいという。デメリットは承知の上で止められない“進歩”ということか…。
慶応義塾大学 栗原聡教授
「インターネット作りました、SNS作りました、今度は人工知能・・・、止まることはないんです。原子力と一緒です。僕らは原子力を使いきれてない。手に負えない部分はある。でも効率化とか、何かいいことがあって使い続ける。僕らは悲しいけど学べていない。だから止まらないことを前提で考えなきゃいけない。何か(悪いことが)起きることは間違いないんだけれど、だったら僕らはなんとか被害を少なくしようってことはできるんじゃないかと…」
悪用の可能性を恐れて進歩を止めることはできない。科学の発展の中で常に交わされてきた議論だ。果たして「チャットGPT」は、光と影、どちらの顔を前面に押し出してくるのだろうか?
(BS-TBS 『報道1930』 4月18日放送より)