侍ジャパン栗山監督「信」の象徴 村上選手

去年11月のインタビューで、栗山監督は「僕が一瞬たりとも大丈夫かなって試合中に思ったら負けるから、信じ切っていきます。」そう話し、『信』という字を書いてくれました。
今回のWBC、栗山監督の『信』の象徴ともいえるのが、村上宗隆選手。
全て4番で出場した村上選手の1次ラウンドは、三振に次ぐ三振。結果は14打数2安打、打率.143、7三振にホームランは0。
ーー開幕前(オリックス戦で)6番で結果が出ていたのに、WBC初戦でまた村上選手を4番にした。その理由は?
栗山監督
「本当のことを言うと、6番にしたときに、開幕戦は4番って決めてました。彼の調子を上げるための火種をつけなきゃいけなかったので、1回ちょっと悔しがることを含めて。ちゃんと本人(村上選手)を呼んで『打順下がるよ』って話しました。4番を打つために、こっちがやってあげられることは手をつくそうと思って、1回打順を動かした。
ただ、準決勝から打順を下げたときは言ってないです。」
ーー1次ラウンドでの「4番村上」は決めていた
栗山監督
「僕は行きたかったです。今、打順がアメリカでは“4番よりも2番、3番の方が価値がある”みたいな流れになっていても、あれだけ4番にこだわるムネ、村上が僕は大好きなんですよ。昔の野球っぽくて。“4番で日本を背負うんだ!”っていう、ああいう選手大好きで。だから打たせてあげたいし、結果を残させてあげたいしっていう、僕の個人的な感情と監督の仕事は全然違うところにあって、いつもそこでせめぎ合うんです。」
負けたら終わりの準々決勝で、村上選手は4番から5番に。
ーーこれは村上選手に事前に話した?
栗山監督
「例えば何も言わないで4番から外して、本当に悔しがらせて火をつけるってやり方もあるし、ちゃんと冷静に、打順が違うときの『打線見てみて』『自分の違い見てみて』とか、いろいろ意図がこっちにはあるんです。僕がずっとやってきたチームの選手だったらしないかもしれない。ただ、短い期間で、(ずっと)一緒にやってる選手ではないので、僕の思ってることはちゃんと伝えなきゃと思ったので、このときは電話で『外れるよ』って。こうこうこういう理由で外すからねって。『とにかく勝つよ』っていうのは伝えました。」
ただただ、勝ちを求めて 皆がベンチで村上選手にアドバイス

ーー準決勝から吉田正尚選手が4番、村上選手は5番に。それは決めていた?
栗山監督
「(ひるおびでは)“村上6番”っていう案を出されていましたよね(笑)
ただ、流れを見たときに、僕はどこかで村上が打ち出すと思っていた。打ち出しそうな雰囲気の村上が、6番よりまだ5番だと、僕は最後思ったんで。」
「ベンチで村上選手が苦しんでると、翔平も試合中に誰かに教えたりするタイプでは絶対ないし、(吉田)正尚もそうなんですけど、2人とも『ムネさ、今のところちょっとやっぱ・・・だよな』とか。
みんなが打たないと優勝できないこと、アメリカをやっつけられないことをわかってるんで、みんなが必死になって、『今ちょっと開きがさ』とか話してる。
僕以上にみんなが『ムネ打て!』と思ってるんですよ。だから、打順はあんまりこだわらなくても、どう並べても大丈夫だという安心感は僕にはありました。想いとして』
ーー2022年11月、栗山監督にWBCへの覚悟を聞くと「優勝しかないです。優勝します。これはもう本当にそうしないと選手に失礼なんで」と。
栗山監督
「これは経験上なんですけど、中途半端に“勝ちたい”とか、“勝とう勝とう”“頑張ります”みたいのは絶対許されないんですね。伝わらない。“勝ちます”って決めれば、作戦もある程度方向性が出るので。自分に言い聞かせるところもあるんですけど。」
ーー監督だからこそ、孤独な瞬間もあったのでは。支えになったものは?
栗山監督
「支えは、ないんですね。例えば準決勝でも、村上選手のところでバントか打たせるか?みたいに言われましたけど、一番怖くなる瞬間って、実は部屋に帰ってからなんですよ、試合終わってから。
(試合中は)興奮して、一番確率の高いものを選んでいくんですけど、『もしあそこでゲッツーになってて、負けてたらどうなってたんだろう?』っていうのが、試合が終わると浮かんでくる。そういう時って、なんかすごく怖くなったりするんですけど、誰に聞くわけでもないですし、誰に話すわけでもなく、自分の中で処理するしかないので、監督っていうのは。そこはちょっと孤独なところがあるかもしれない。戦うときはガーッ!!といくだけ。」














