北海道のベンチャー企業が今年2月、気球による宇宙旅行の募集を始めた。今はまだ一般の人にとっては手の届かない存在の宇宙旅行だが、誰でも気軽に宇宙へという未来が近づいている。

気球で成層圏高度2万5000m、1時間滞在で2400万円。JTBをパートナーに迎え、すでに応募あり

3月8日午前2時、北海道幕別町の農場で行われていたのは気球を使った宇宙旅行の実験だ。午前6時、パイロット一人を乗せたキャビンを接続し、ヘリウムを注入した気球は上空1190mまで上昇。約90分後、出発地から16キロ離れた地点に着陸し実験は成功した。実験を指揮する北海道の宇宙ベンチャー「岩谷技研」の岩谷圭介社長に聞いた。

――前回取材したのは設立3年目の2018年、熱帯魚を乗せて高度2万5000mを飛行する実験に成功したばかりだった。

岩谷技研 岩谷圭介社長:
あそこが一つの契機になったところで、あれがあったからこそここまで来られたというすごく大事なマイルストーンの一つを以前注目していただいて、本当に感謝しかありません。

大手旅行会社のJTBが搭乗者の打ち上げ地点までの移動手段や宿泊先の手配などを担当するパートナー企業となり、宇宙旅行の乗客募集を2023年2月に開始した。岩谷技研の計画では、気球で地上から2時間かけて成層圏の高度2万5000mまで乗客を運び、1時間ほど滞在する予定で、青い地球が宇宙に浮かんでいる絶景を見ることができる。初回の募集人数は5人。価格は2400万円と高額だが、すでに応募が来ているということだ。気球を使った宇宙遊覧旅行の実現が目前に迫っている。

――上げられるのはいつぐらいになりそうか。

岩谷技研 岩谷圭介社長:
早くても2023年度末になるかなと考えています。

――以前、実際に人を乗せて上げるためには大型化が必要だと話していた。どのような形でクリアしたのか。

岩谷技研 岩谷圭介社長:
そこが一番苦労した点かもしれません。高高度まで上がる人用の気球を作れるメーカーというのは世界にないので、私たちは人が高高度まで上がれる気球を作れる唯一のメーカーです。安全面やもしもの時どうするのか、制御面などいろいろな課題があります。人用のものの開発はないものを作るというところでしたから、そんなに平坦ではなかったです。

北海道江別市にある岩谷技研の工場には、実際に2万5000mの宇宙遊覧旅行で使用するキャビン「T-10 アーサー」の実物がある。材質は大部分がプラスチックでできているが、氷点下80度になる成層圏の環境でも耐えることができ、現在地やキャビン内の気温、圧力を示す計器も備えられている。岩谷技研よるとロケットによる飛行で命に関わる事故が起こる確率は約3%だが、気球の場合は0.000008%と圧倒的に低い確率となっている。

パートナー企業のJTBは。

JTB 花坂隆之代表取締役専務執行役員:
当然、全国各地でこれから打ち上げが行われていきます。宇宙関連ビジネスなどに力を入れている自治体もたくさんいらっしゃいますし、こういうものを契機にその土地を訪れるお客様が増えるような取り組みもぜひこのプロジェクトを通じて実現をしていきたいなと思っています。