松本市の島立(しまだち)地区で、月に一度だけオープンする特別な「居酒屋」があります。

地域の人たちが集まるその場所、実は公民館の一室です。

コロナ禍での中断を経て3年ぶりに再開した「公民館居酒屋」。そこには“名物おかみ”の地域への思いがありました。

「はい、ここが“公民館居酒屋おれんち”です」

案内されたのは、がらんとした部屋。

しかしこの場所が、月に一度、地域の人でにぎわう居酒屋に様変わりします。


松本市島立(しまだち)の、大庭(おおにわ)公民館。


「こういうふうな感じで、ここに(机を)並べて…」


9年前から公民館長を務めるのが、藤森喜久代(ふじもり・きくよ)さん・75歳。


みんなから「きくよさん」と慕われる大庭(おおにわ)地区の元気印で、公民館居酒屋「おれんち」の“おかみ”でもあります。


■大庭公民館長 藤森喜久代(ふじもり・きくよ)さん
「地域の中でお互いに顔が見える関係そういう関係性を作りたいなって思っていて、公民館の居酒屋をやろう!と。楽しいことが好き、お酒を飲んでおしゃべりすることが好き、地域作りや仲間作りに興味関心のある方ぜひお出かけくださいということで」

2014年から70回を数えた「居酒屋おれんち」。
ただ、新型コロナの影響でこの3年間は中止を余儀なくされました。


9年前に、地域の若手がプレゼントしてくれたという看板も…

■藤森さん
「ここにこうして入れてあります。(この3年間はずっとここに?)ここです。入れっぱなし!」

再び集えることを信じて、その日を待っていました。


そして、ついに。
おととい、3年ぶりに「居酒屋おれんち」の看板が掲げられました。


■藤森喜久代さん
「あぁやっとこの看板、こういう風に出せる日が来てよかったなと思いますし、待ち焦がれていた気持ちって何とも言えないですね。(お客さんは)いつもだと12~3人かなと思うんですけど…」「あぁ!いらっしゃい!」


喜久代さんの心配をよそに、次々と地域の人が来店します。

さてここから、居酒屋のおかみは料理やお酒の用意で大忙し!

かと思いきや…

■藤森喜久代さん
「会費は無料で、お出かけいただく方は自分用の飲み物とつまみをご持参くださいっていうのが、おれんちのルールです。どうせやるなら、自分も楽しみたいと」

誰かが負担するのではなく、みんなが無理せず、楽しめること。

これこそ、長く続けてこられた理由です。

一方…

「いってきます」


意気揚々と自宅を出たのは、「おれんち」の常連客、上條英雄(かみじょう・ひでお)さん。

■上條英雄さん
「月に一回顔を合わせられると、元気でいたかなとかそういう確認もできるし、自分はもともとそういう飲んだりするのも好きだし」

「おれんち」の再開を、心待ちにしていました。


「こんばんは~」「上條さん、待ってたよ!」


■藤森喜久代さん
「それでは、『おれんち』の再開店を祝して、みなさんありがとうございます、乾杯!」


机の上にはあっという間に、それぞれが持ち寄ったお酒やつまみが並びます。


■常連客・斉藤さん
「常連で、ここ(上條さん)といつも(来る)。家も隣なんだけど、でもこういうのはまた別で」

■常連客・上條さん「気が合う人は、最高!」

こちらでは、こんな光景も。


将棋盤をはさんで向かい合う丸山さんと萩原さんは、「おれんち」がきっかけで友人になったそう!

おれんちでの対局はおなじみの光景です。


■丸山さん「格別かもしれんね、またいいもんじゃないですか」

■萩原さん「自由に飲んで、自由にいろいろしゃべれる。気を遣わないで」


戻ってきた、にぎわいと笑顔。3年間、待ちわびた光景です。


その中心にはもちろん、“おかみ”の喜久代さんがいます。


■区長
「あのね、大庭があるのは喜久代さんのおかげですよ。皆さんよくわかってるでしょ?」


■女性の参加者
「こうやって皆さんと話せるようになったのも喜久代さんのおかげで、声をかけていただいて、いろいろこういう行事に参加しておいでよって声をかけていただいてからの…だから本当に感謝しています」

この日は5歳から90歳まで、20人以上が来店し、予想を上回る大盛況。

楽しく集う中で、喜久代さんにはこんな思いもあります。