

(オーハラユーコさん)「小さいときよく写生大会とか、わりと選ばれたりとかすることがあったんですよね。そういうときに『せっかく出すんだったらもっと先生が良くしよう』と直されたんですけど。それが結構ショックで嫌で。結構思い出に残ってますね」

絵が大好きだったオーハラさんはアートの世界で身を立てようと、専門学校を卒業後、ファッションデザイナーとしてアパレル企業に就職。
しかし、そこでも現実に直面します。

「大量に作って大量に売る。毎シーズン、新しいものバンバン出すので…。
だんだん、これを自分の一生の仕事にしていいのかなって疑問がわいてきて、情熱が持ち続けられなくなってしまったんですよね」
デザイナーを辞め、25歳でイギリスに留学。

芸術大学のアートクラスで、これまで教わってきた美術とはまったく違った取り組みかたに衝撃を受けます。
「自由でいいっていうか、正しいやり方にはまらなくてもいいっていう、やりたいと思ったことをやっていいし、やりたくなかったらやらなくていいという環境に触れて、それを自分の子どものときに味わってみたかったと思ったんですよね」
留学が転機となったオーハラさんは、3年前にイラストレーターとして独立。
芸術家の滞在中の創作活動を支援する塩尻市の「アーティスト・イン・レジデンス」にも参加しました。

特産のワインブドウの搾りかすを絵の具に使うなど、自由な作風でキャリアを積み上げました。



「この紫の部分がそのままブドウの絵の具の色。結構鮮やかなピンクとか紫の色みだったんですが、やっぱり時間が経つと植物が枯れるのと同じように色が褪せていって茶色く変化していきましたね。面白いです。季節が変わっていくように時間の経過もすごくわかるので」

信州の自然にほれ込んで移住した朝日村で創作活動を続けるオーハラさん。
イギリス留学で経験した、自由で伸びやかなアート体験を子どもたちにも伝えたいと、4月から自宅で絵画教室を開くことを決めました。
和室を二間続きで使って壁を白い布で覆うなど、少しずつアトリエ作りを進めています。
小学生は、いろいろな表現方法に出会って楽しんでもらう「のびのびクラス」。
中学生は、作ることにじっくり取り組む「もくもくクラス」。
アトリエの名前は「ユモレスク」に決めました。

「フランス語で気まぐれなとか、軽やかなという意味があってですね。形式にこだわらないで伸び伸びとやってもらいたいので」

子どもの感性や気持ちを大切にしていきたい。
そして、答えや目指す先を教えるのではなく「引き出し」を増やすお手伝いをしてあげたいと話すオーハラさん。
アトリエは春の訪れとともに子どもたちの笑顔と希望に包まれます。