ウクライナで続く戦争では、軍事力の攻防である“見える戦争”とは別に、“見えない戦争”といわれる情報戦が繰り広げられている。その主体は、アメリカ中央情報局、CIAと現在いくつもの組織に分かれている旧KGB(ソ連国家保安委員会)だ。今回は“暗闘”とも呼ばれる情報機関の戦争を読み解く。

■ロシア軍のゼレンスキー斬首作戦を止めたのはCIAか

4月30日のアメリカ・タイム誌に、ゼレンスキー大統領本人や側近らの取材として、ロシアのウクライナ侵攻が始まった日についてこんな記事が掲載された。

その日、大統領は2人の子どもを避難させる準備をしていた。ウクライナ軍から「ロシア軍の襲撃チームがパラシュートでキーウに降下している。大統領と家族の殺害か拘束を狙っている」と伝わる。大統領府では、バリケードやベニヤ板で出入り口を封鎖。ガラクタの山の防御壁を築いた。

事前に情報があったために初日の暗殺計画はとん挫する。その後もロシアの暗殺計画は次々と失敗に終わっている。そして3月、アメリカ議会でバーンズCIA長官は、こう述べた。

「キーウに関するロシアの計画について、1月に持っていた最も生々しい懸念すべき詳細な情報を彼と共有し、その後も毎日続けている」

ロシアによるゼレンスキー斬首作戦失敗の裏にも、CIAが持っている“生々しい”情報の提供があったとみられている。

春名幹男 元共同通信ワシントン支局長
「ゼレンスキーさんは情報源に言及していないが、バーンズ長官がそう言ってますから・・・。この暗殺計画では傭兵が使われるということまで掴んでいた。そういう情報もCIAは得られるようにしていたんだと思います」

さらにCIAの軍事部門は2014年のロシアのクリミア侵攻後にウクライナ東部へ入り、軍や情報機関に実際の戦闘の作戦以外に、相手への情報工作のやり方も教えていたという。CIAとウクライナの深い関わりを知るには、ウクライナの情報機関の歩みを押さえておきたい。