ただ、「そのうち」というのが遠いのか近いのか、地中の変化から噴火するまでにどれだけの時間の猶予があるのか…

本多さんは「火山の状態をちゃんと見るためには、地面の下が日々年々どう変化しているかを追いかける必要がある」と言います。

噴火の兆候のない富士山の❝平時の状態❞を知っておくために、これまでに富士山には100近い観測機器が設けられて山体膨張や地中の振動などを観測しています。

さらに2019年に富士山の麓にある富士山科学研究所の敷地内に新たな観測機器が設置されました。

それが「相対重力計」

富士山科学研究所に設置されている「相対重力計」


火山の噴火の兆候は、「山体膨張」という山が膨らむ事で捉えることができます。これは人工衛星GNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)の宇宙からの測量で観測できます。

しかし、それだけでは、山体の変化がマグマの上昇によるものなのか、火山性ガスの噴出によるものなのか、または他の要因によるものなのかは分かりません。

一方で火山の観測では質量が大きいマグマが地表に近づくと、重力が大きくなることが分っています。山が膨らんだ場合、重力が上がればマグマが、重力に変化がなければ、軽い火山性ガスが上昇してきていると推察することができます。

この変化を観測しようというのが相対重力計です。

富士山科学研究所に設置されている相対重力計は、いわば超精密なバネ秤で地球の重力の10億分の1の変化を捉えることができ、微妙な地中のマグマの上昇が分かるそうです。


本多 主任研究員:
設置された相対重力計の観測データが加わることで、より精度の高い噴火予測が可能になり、どういう形態か、またどういうタイプの噴火なのかで、ガスが出て終わりなのか、火山灰がたくさん出そうなのか、溶岩流の速度が速そうなのかが分かる。そうすると避難の対応がしやすくなる。