―――本当にギリギリのところを戦闘機が飛んでいく危険な映像、場所はクリミア半島、セバストポリというところから60キロ離れた黒海上です。飛行していたのはアメリカの「MQ-9」無人偵察機です。そこに接近してきたのがロシアの戦闘機「スホイ27」。映像では、燃料を落としながら接近している。これはどういう行為なんでしょうか?

三澤肇解説委員: 防衛省関係者とか軍事専門家に聞いてみたんですが「よくわからない」っていうんです。ただみんな「プロフェッショナルじゃない」って言うんですよ。これは「フェールダンピング」と言って、非常時にやる操作で、緊急時で着陸するため燃料を減らさなきゃいけないときにやる。ただ、これをすると航続距離が短くなるので危険。では(今回の行為に)何が考えられるのかということでいうと、例えばこの無人機の飛行を妨害したい、とっさにパイロットが思いついたのが、この方法だったんじゃないか、というのが一つ。もう一つは、燃料を落とすことによってエンジンの近くに引火するかも知れない、あるいはカメラの操作を妨害する意図があったんじゃないかと言うんですが、いずれにせよプロじゃないという見解でした。

―――中村逸郎先生は、パイロットの判断なのか、上の指示か、どう考えますか。

中村逸郎筑波大名誉教授: 2014年、クリミアをロシアが一方的に強制併合した後ですね、アメリカとロシアで非常に緊張が高まっているところだったんですね。ですから米ロの衝突は、黒海を巡って起こるんじゃないかとは言われていた。今回、ロシアのメディアでも出ているんですけども、クレムリンの相当上層部の承認を得てやった行為じゃないかって言われてるんです。これにプーチン大統領が本当に関わったかどうかはわからないけれども、プーチン政権のかなり上の方で承認を得た行為で現場の判断だけではなかったというふうに言われてるんです。

―――今後アメリカの対応ってどうなりそうですか。

中村逸郎筑波大名誉教授: アメリカとしては何とかして落ちた機体を回収したいところなんでしょうけれども、実はもうロシアがもうすでに機体の一部残骸を回収したというニュースも出てるんです。それはアメリカにとっては非常に危険なことなんです。2011年なんですけども、イランの上空を飛んでいたアメリカのドローンをイランが追撃して落としたんですね。その後いろいろ情報を得て、イランがドローン開発に成功したというふうに言われてますので、アメリカとしては残骸をロシアが回収するっていうのは、将来ロシアがドローン開発に踏み込んでいくんじゃないかということで、アメリカ側も焦ってるわけなんですね。

三澤解説委員: 「MQ-9」は翼の下に、ミサイルを積めるんです。偵察だけじゃなくて攻撃もできるんで、もしミサイルを積んでいればそれも分析されるかもしれないということで、非常に機密性が高い機体であることは間違いないですし、これ日本の海上保安庁も導入している機体です。アメリカは遠隔装置でプログラムを消去したと言ってるんですけども、本当のところまではよくわからないですね。