より安く、より大きな衛星を…
日本の宇宙開発の次の主役としてデビューするはずだったH3。9年前から、およそ2000億円かけて開発されてきました。その至上命題の1つが「より安く」です。今、運用中のH2Aは成功率98%で最も安定していますが、衛星打ち上げの費用は100億円。一方、例えば、アメリカのスペースX社ではおよそ65億円です。そこで、衛星打ち上げビジネスで勝つためにH3が目標に掲げた費用は50億円。電子部品の9割に自動車用部品を採用するなどしてコスト削減を図りました。

H3は、より大きな衛星の打ち上げを可能にするための新型です。H2Aロケットより一回り大きく、重さはほぼ倍。そこには至上命題がありました。「エンジンのパワーアップ」です。部品の数を減らしてコスト削減を図りながら、世界で初めてという構造に変えて、推進力1.4倍にすることを目指しました。
ロケットエンジンに棲む魔物
実は、ロケットのエンジンは「高温、高圧、高振動」という極限状態で燃焼するため、たとえネジ1本の亀裂でもシステム全体の破壊につながる恐れがあり、「エンジン開発には魔物が潜む」と言われています。その道のりは険しく、開発期間は2回の不具合で2年間延長されてきました。今回の打ち上げで、第1段のメインエンジンが燃焼を終えたとき、総合指令棟では「よくやった」と歓声があがりました。

ところが、第1段では魔物は現れなかったと思いきや、第2段のほうに魔物が現れたのです。こちらはH2Aとほぼ同じものを継承していて、問題はないとみられていました。
技術者たちの努力や苦労が実を結び、H3が無事宇宙へ打ち上がるのはいつになるのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2023年3月12日放送より)














