翌日、自民党の高島直樹都連幹事長は「了解していない」と茂木敏充幹事長に抗議を申し入れた。いまだ自民党都連はファイティングポーズを下ろしていない。
「勝手な国替えは許すな。足をひっぱっているくせに」と、都連関係者は吐き捨てる。
3月3日には、公明党が候補者を出すことを検討していた東京18区(武蔵野市など)で、候補者の公募を開始。自民党の都連幹部は「公明党がこれ以上候補者を出さないよう塞いだ」と、公明党を強く意識したものだったことを認めた。
こうしたなか、再び公明党が動いた。
3月9日に埼玉14区(草加市など)で石井啓一幹事長、愛知16区(小牧市など)で伊藤渉政調会長代理と、党の幹部の公認を同時に発表したのだ。
「公明党もやってくれるよね、本当に粘着質な組織だよ」(自民党愛知県連関係者)
「自民党公認の候補でさえ、自民党員の7割が投票してくれればラッキーという状態。公明党の候補なんて応援しないよ」(埼玉県選出の自民党議員)
自民党愛知県連の丹羽秀樹会長は「調整のない中での突然の発表に、正直驚いている」と話し、公明党との調整不足を指摘する。
また、自民党埼玉県連の柴山昌彦会長は「自民党としてどうするかは、白紙の状況だ」と、公明党の候補を応援しない可能性も示唆する。
一方で、公明党の西田実仁選挙対策委員長は「了解を得ている」と、自民党の幹事長・選挙対策委員長は了承済みだと反論した。

「票が増えない」公明党の本音
自民党内からは「なぜここまで公明党は強気なのか」との声も上がるが、公明党なりの“正論”がある。
「(全国の小選挙区の数)289のうち、私どもが過去出しているのは9ということですから。私どもが今回“10増”のところで要請をしていることは、全体のバランスからいって、なにか無理な要望をしているわけではない」(公明党・石井啓一幹事長 2月24日)
自民党の森山裕選挙対策委員長が「“10減”のところは全部、自民党がかぶっている」と公明党の要求に難色を示したことを受けた発言だった。
一方で、公明党の幹部からこんな本音も聞こえてくる。
「比例票が増えないなかで、都心部の選挙区にできるだけ立てたい」(公明党幹部)
背景には、党勢への危機感がある。公明党は、支持層の高齢化で組織力が衰え、去年の参院選の比例票は、目標とした800万票を大幅に下回る618万票に沈んでいる。
そのため、次期衆院選では、一定の知名度がある幹部を比例から選挙区に移し、なんとしてでも議席を獲得したい意図がある。関係者は「厳しい選挙区で勝ちあがってもらって、今後羽ばたいてもらうため」と、次期“公明党代表”候補の石井幹事長や、党のホープである伊藤政調会長代理に期待をかける。
さらに、公明党が「強気」な理由については、「焦り」の裏返しとの指摘もある。
「やはり大阪の状況だろうね。維新は、大阪市議会で過半数を占めたら、衆議院でも全ての選挙区で候補者を立ててくるかも。公明党はそこを懸念している」(自民党幹部)
日本維新の会は、過去4回の衆院選で、公明党が候補者を立てた大阪の4選挙区に関し、候補者擁立を見送ってきた。前回の衆院選では、これらの4選挙区を除く全ての選挙区で維新が勝利しており、公明党幹部も「大阪は相当厳しい」と焦りを口にする。
どうなる連立関係 太くなる「新しいパイプ」も
一方で、関係修復に向けた動きもある。