大方の予想とは異なり日銀次期総裁候補となった植田和男氏。財務省出身でも日銀出身でもない新鮮味はあるが、今、日銀が抱える問題はとてつもなく大きい。荒海に漕ぎ出す植田氏の舵取りを議論した。

「最後まで“アベノミクスを継承する”とは言わなかった」

日銀総裁候補に考えと方針を問う“所信聴取”が国会で行われた。焦点は超低金利政策を継続するのか…。アベノミクスをどう評価するのか…。経済学者である植田和男氏にはこんな過去がある。

アベノミクスの理論的支柱とされた大規模金融緩和の提唱者で、イエール大学名誉教授の浜田宏一氏から対談を依頼された時、「金融政策が効くか効かないかと両者のバランスを取って議論するのではなく、浜田先生のように効くと決めつけている人とは議論できない」と断った。

その植田氏が、国会議員からの質問に答える形で自らの考えを述べた。大前提として「大規模緩和の成果をしっかり継承し、総仕上げの5年間にしたい」とした上で、大規模緩和には副作用が生じていることを指摘。国債の買い入れ、ゼロ金利政策にも副作用が生じたことは否定できないとし、日銀が株価を下支えするためにETF(上場投資信託)を大量に購入したことに対して今後どうすべきか大きな問題だとした。

そして、安倍元総理はかつて「日銀は政府の子会社」といったが、植田氏は「自主性が確保されている。政府の子会社ではない」と明言した。この答弁を識者はどう見たのか。