山口県を代表する味覚のひとつに下関のフグがあります。ただフルコースとなると高級料理だと感じる人も多いかもしれません。そんなフグを気軽に楽しんでほしいと下関市の料理店のおかみが新商品の開発を進めています。創業75年の「ふく旅庵下商会館」です。

完全予約制で予約を受けた客のためだけに最高の味を、最高のもてなしで提供する名店のひとつです。部屋を整えるのはおかみの西山弥生さんです。
ふく旅庵下商会館 おかみ・西山弥生さん:「値段もそうですが、フグというと特別なものという思いで見えるお客様が多いので、私どもも日々その思いにお応えできるようなおもてなしを心がけております」
客:「わぁ、きれい」「すごい」「撮らないと」
芸術ともいえる鶴盛りの登場に歓声があがります。
客:「くちばし、すごいなあ初めて見ました、このような鶴は」
フグのまちとして全国に知られる下関市。最高級とされる天然のトラフグの取扱量も日本一です。観光客はコロナ禍で半減しましたが、これから回復が期待されています。国内にとどまらず海外からも本場の味を求めてやってくる観光客が見込まれますが、本格的なフグ料理には予約が必要など、気軽に味わうにはハードルが高いといいます。西山さんは、より多くの人にフグの味を楽しんでほしいと、新たな取り組みを始めました。それは「フグのだしを使った料理」の開発です。

毒のあるところ以外捨てるところがないというフグですが、それでも見栄えなどで客には提供していない「アラ」を使ってだしを取ります。このだしで、炊き込みごはんや雑炊をつくるのです。
ふく旅庵下商会館 おかみ・西山弥生さん:「昔食べてた雑炊やふぐごはんを、気楽にまた食べたいよねとおっしゃっていただける」
フグのうまみが凝縮された雑炊などは、コースを頼んだ人だけが味わえる「ひそかなぜいたく」しかし、定年退職をきっかけにした節約志向などで、コースから遠ざかってしまった客もいると知り「ひそかなぜいたく」を手頃に提供できないか考えたのです。
時間のない観光客向けに、乗り物でも味わえるおにぎりもつくりました。

西山さんは、いまの場所のほど近くに新しい店を出し、フグだしを使った料理を提供します。清掃活動やイベントなどにも参加して高齢者が多いと感じ、新たな出店は、地域への恩返しとも考えています。これから内装を整えるなどの準備を進め、2023年春の開店を目指します。
「フグには人を幸せにする力がある」と西山さん。
多くの人に福が訪れるようにと願いを込めて自慢の味を提供します。