「コンタクトレンズが欠品していて、手に入りにくくなっている」というニュースがありました。これには様々な要因があるようですが、私もコンタクトユーザーで気になったので、その原因、対策、今後を取材しました。
まず、何が起きているのか?江戸川区にある販売店「片山メガネ篠崎店」の店長、小室憲司さんに伺いました。
コンタクト不足の原因は戦争
――コンタクト欠品というニュース、本当ですか?
「片山メガネ篠崎店」店長 小室憲司さん
「欠品してる商品がもの凄い増えたなって感じがしますね、現場にいると。各メーカーからFAXで情報が送られてくるんですけど、例えば、最大手のジョンソン・エンド・ジョンソンでは、新規に欠品された度数が、1、2、3、4、5、6と…全部で8つの度数が新たに欠品です」
――そんなに!何が起きているんでしょうか?
「片山メガネ篠崎店」店長 小室憲司さん
「最大の要因は、戦争です、ロシアのプーチン政権によるウクライナ戦争。ジョンソン・エンド・ジョンソンの場合は、アイルランドに工場があったんですが、それまではロシア上空を飛んで届いていたんです。それが、ロシア上空便が使えなくなって、他の航路を探すのにかなり大変になって、それで物流がおかしくなってしまいました」

「ジョンソン・エンド・ジョンソン」、「ボシュロム」、「アルコン」、「メニコン」など、ほぼ全てのメーカーで、欠品度数が増えているそうです。
特に、一日使い捨てタイプのワンデーと、乱視用に目立っていて、「片山メガネ」では全9メーカー、50ブランドの取り扱いのうち、およそ30のブランドの一部度数が欠品しているということでした。
小室さんは、この仕事に関わって30年だそうですが、こんなことは今までなかったとおっしゃっていました。
戦争に加えて他の要因も…
ただ、お話を伺うと、戦争以外にも様々な要因が複雑に絡まっていることが分かりました。「需要と供給のバランスがおかしくなった」のですが、その流れを整理すると…
1.コロナ禍で外出しなくなった。
2.家にいるのでメガネを使うことが増えて、コンタクトを使わなくなった。
3.そしてメーカー側は、工場の人員を削減するなどして、労働力が低下した。
4.そんな中、コロナも落ち着き、外出が増えて、コンタクトの需要が増えた。
5.では増産しよう!という段階で、ウクライナ侵攻の影響で、物流が停滞。
6.さらに半導体不足も伴って、工場をフル稼働できない状態。
7.その結果、コンタクトの欠品がなかなか解消されない。
こういった流れがあるようです。
代替品は度数が同じならOK?
「いつも使っているコンタクトがない」となると、代わりのモノを探さなければいけません。そこで、「同じ度数であれば、他のメーカーのものを使ってもいいかな」と思い、眼科医の平松類さんに伺いました。

――いつものコンタクトがないときはどうしたらいいんでしょうか?
「二本松眼科病院」副院長 平松類さん
「欠品となると、皆さん焦って『ネットで買わなきゃ!』と思う人も多いと思うんですけれども、コンタクトレンズというのは『度数が一緒でも、メーカーが違えば全く別物』と思っていただいた方がいいです。ネットで、同じ度数だからと焦って買うのはやめた方がいいです」
――度数が同じなら問題なさそうですが?
「二本松眼科病院」副院長 平松類さん
「コンタクトについては、コンタクトのカーブの具合を示す『ベースカーブ』とか、コンタクトがどのぐらい水分量を含んでるかを示す『含水率』とか、どのぐらい空気を通しやすいかを指す『酸素透過係数』など、たくさんの要素が実はあるんです。なので、例えると、靴を選ぶ時も、26センチの靴でもメーカーによって、きつかったりっていうのがあると思うんですね。同じようにコンタクトも、フィッティングが重要なわけです」
――そうなんですか…
「二本松眼科病院」副院長 平松類さん
「合わないコンタクトを使ってしまうと、目に傷がついて感染症が起きたり、視力低下になったり、酷いと失明などの原因になってしまうので、眼科医の診察があって処方があって、使っていただくという流れになっています」
なるほど…たしかに、目に直接のせて使うものなので、使い方を間違えると大変です。実は、コンタクトレンズは、心臓のペースメーカーなどと同じ「高度管理医療機器」に分類されます。「正しく使わないと、人体へのリスクが高いもの」という区分になっています。
厳密に言うと「処方箋の提出」は法的には義務ではないものの、日本コンタクトレンズ協会の基準では「眼科医の処方・指示に基づく販売」が「推奨」されていて、眼科医の指示に従って正しく使用することが大切そうです。
だから、ネット通販で自己判断せず、「まずは眼科で検査し、レンズのノリを確認して」ということでした。