■小さな命、ミルクボランティアが支えた

殺処分ゼロにつながった背景の1つが、鹿児島市が昨年度新たに始めた「ミルクボランティア」。離乳していない幼齢の子ネコの世話をします。
管理センターが引き受ける子ネコの状態は様々で、中には見つかった時にけがをしたり衰弱したりして、センターで面倒を見るのが難しい子ネコもいます。そうした子ネコを、動物愛護団体や動物病院に引き取ってもらった上で里親探しを依頼し、ミルクは市が支給します。

1年目の昨年度は、鹿児島市で保護されたネコ618匹のうち、ミルクボランティアに登録している10団体が73匹の子ネコを引き取りました。残りの545匹は、管理センターの譲渡会で里親が見つかったり、元の飼い主が見つかったりした結果、殺処分ゼロが達成できたのです。

ミルクボランティアは、県外ではすでに導入している自治体もありますが、県内では鹿児島市が初めて導入しました。手探りで始めた地道な取り組みですが、初年度で結果が出たことになります。
特にケアが必要な子ネコを、ミルクボランティアに託せるようになったことが大きく、担当職員はほっとした表情で「ミルクボランティアのおかげで子ネコたちの命を救うことができた」と話します。

(鹿児島市生活衛生課 ミルクボランティア担当 広瀬祐子さん)「登録してもらえる人がいるか…という心配から始まったんですが、結果的にはたくさんの人に登録してもらい協力してもらえました。大変感謝しています。」
(鹿児島市生活衛生課 萩原信一課長)
「ミルクボランティア事業は、繁殖時期に多く収容される子ネコの対策に大きな効果がありました」
■小さな命を支える人たち

ミルクボランティアの参加団体のひとつ、「犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島」です。イヌやネコの里親探しの会を長年続けていて、23年間でおよそ4,300匹に新たな飼い主を見つけました。
この日、会が開いた譲渡会を訪れた女性は、「せめて自分たちが飼うネコちゃんは、最期までみてあげたい。生きている命だから、責任がある」とネコを抱きながら話してくれました。

「犬猫と共生できる社会を目指す会鹿児島」の杉木和子理事長は、小学生のころにイヌやネコが捨てられているのを見て、「早く大人になって助けたい」と願い続けていたそうです。1999年に会を設立し、定期的に譲渡会を開催。自宅では、高齢だったり持病があったりして、引き取り手が見つからなかったネコたちを飼っています。イヌやネコの命を助けることを子どものころからの目標にしてきただけに、殺処分ゼロに特別な思いがあります。
(犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島 杉木和子理事長)「ミルクボランティアの制度が始まって、全面的に協力しました。殺処分ゼロは昔から目指していたことなので非常にうれしいです。」

会では昨年度、鹿児島市の動物愛護管理センターからネコ8匹を引き取り、すべての里親を見つけました。新たな家族に迎えられたネコたちや、里親となった人たちの表情を見るのは嬉しいと言いますが、課題もあると言います。

