舞台は大阪高裁へ…カギは『死斑の位置』

 しかし検察側が即時抗告(不服申し立て)して、舞台は大阪高裁へと移ることになりました。大阪高裁は再審判断をどう下すのか。カギを握るのが、阪原さん側が新たに示した見解です。それは『死斑』です。

 人が死亡して血流が止まると、血液が重力に従って落ちていきます。それが皮膚の色の変化として現れるのが死斑で、どこに死斑が現れたかで遺体が置かれていた姿勢が推測できるといいます。

 名古屋市立大学の青木康博教授は、弁護団の依頼を受けて解剖時の写真や記録から女性の遺体がどのような姿勢で置かれていたか調べたところ、違和感を覚えたと話します。

 (名古屋市立大学大学院・医学研究科法医学分野 青木康博教授)
 「供述が『最初から最後まで左側臥位(左を下にした横向き)』だというから、それは合わないでしょうということですね」

 女性の遺体は左側を下にした状態で見つかっていて、阪原さんも自白の中で、「左側を下にして遺棄した」と話しています。となると、体の左半分を中心に死斑ができるはずです。一方、解剖記録によると遺体の死斑は「背中全体に出ている」とされ、左右差があるなどの記載はどこにも出てきません。

 青木教授は「実際に遺体を見ていないことを差し引いても自白と遺体の状況が矛盾するのではないか」と指摘します。

 (名古屋市立大学大学院・医学研究科法医学分野 青木康博教授)
 「ずっと仰向けであったと。もしかしたら多少左が下かもしれないくらいの状態でずっと置かれて、最後にこういう形で遺棄したと(推測される)。私は普段、検察や警察と一緒に仕事していますけども、この死斑の状況で『(容疑者が)最初から側臥位(横向き)に置きました』と言ったら、『それお前違うだろう』と(捜査員は)容疑者に対して言うはずです。言うべきです」

 自白と解剖記録の食い違いに気付かなかったのか。当時の滋賀県警の捜査主任はMBSの取材に「20年以上前のことで覚えていない」と話しました。