学生による高齢者スマートフォン教室

若者と高齢者をつなぐ「愛の孫の手システム」

 団体が2020年から力を注いでいる活動のひとつが「愛の孫の手プロジェクト」です。大学生を中心とした若い世代が、パソコンやスマートフォンの利用に不安を抱える被災地の高齢者を直接支援する取り組みです。
 大槌町で行われたスマートフォン教室では県立大学と岩手保健医療大学の学生3人が講師を務めました。

「自動追加がオンになってるとどんどん入ってきちゃうんで」
「このWi-Fiのマークがスライドしていくとあると思うんですけど」

(参加者)
「(どうですか若い人から教わって?)分かりやすかったです。(使えるようになりそうですか?)そうですね、なります!」
「がんばります」

 取り組みは、孫世代に教わることで高齢者が情報機器に親しみ、社会とコミュニケーションをとる動機づくりになることが期待されています。さらに被災地の支援を担う次の世代を育てる狙いもあります。

(心の架け橋いわて 鈴木満 理事長)
「高齢者の生の声を聴ける、普段のおじいちゃんおばあちゃんの声だけじゃなくてICTを使えず困っている高齢者の声を自ら拾える、というそこに、彼らの成長の大きな原動力があったと思う」

 この日、取材中の記者が参加者の一人から、「連絡先の見方が分からない」と相談を受けました。忙しそうな学生に代わってスマートフォンの操作を教えたところ、見たかった連絡先の主のことを話してくれました。

(参加者の女性)
「家が近所で小さい時からの友だちなのね。悩み事があれば相談にいってだいぶ救われました」

 親友だという女性は津波で亡くなっていました。もうつながることはないアドレスですが、「心の支えだ」と話します。

(参加者の女性)
「寂しいとき見て、複雑な涙をこぼして、よし!また頑張るぞって感じでやっています」

 学生たちにとっては大きな学びと気づきがあったようです。

(岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 村上若さん)
「高齢者からしたらすごく難しいものという学び、どうやって教えればいいかというまた学びがあって、いろいろな経験をしてきているので考え方も違いがあっていろいろな学びがあります」
(岩手保健医療大学看護学部 本間咲月さん)
「高齢者だからできないとか決めつけるのは違っていたんだなとすごく学んで、看護を学んでいる身としてはあきらめちゃいけないことなんだと思いました」

 団体は今、コロナ下の新たな支援策として簡単に操作できる端末を使ってオンラインで学生たちと高齢者を結ぶ「愛の孫の手システム」の運用に力を入れています。

(NPO法人 心の架け橋いわて 鈴木満 理事長)
「孫の言うことなら何でも聞くっていう特性を活用できないかと。そうなりますとこれまで興味を持てなかったこともちょっと前のめりになってやっていただける。これやっぱり孫の手の大きな効用だと思っています」

 被災地の心のケアは世代を超えた新たなステージに入ろうとしています。