■”運転免許”取得への挑戦 指導員とは手話でコミュニケーション

「これから社会人になるのに運転免許は必要だと思いました」

将来に向けて運転免許の取得です。

この日、佐藤さんがいたのは、松山市にある第一自動車教習所。技能教習は同じ指導員が卒業まで担当する指導方法をとっています。

愛媛県公安委員会指定の自動車教習所では唯一、手話通訳ができる資格を持った指導員がいるのもこの教習所の特徴。その指導員が松本春奈さんです。松本さんから指導を受ける佐藤さん、どこが良くなかったのか教わります。

松本教官「車と壁が近い原因は何かな?」
佐藤さん「ハンドルを回すのが早い」
松本教官「そうそうそう」

松本教官
「手話ができたほうがスムーズに進みます。1回1回筆談だとその時間も取られますし。わずか50分の授業の中で、いっぱい伝えたいことがあるので」

佐藤さんは普段、補聴器をつけていますが、その聴力は飛行機の傍にいてもエンジン音が静かに聞こえる程度です。

2008年に道路交通法が一部改正され、音が全く聞こえない聴覚障がい者も条件付きで車の運転免許が取得できるようになりました。その条件の一つがワイドミラーです。

普段補聴器を使っている佐藤さんはワイドミラーを付ける必要はありませんが、状況によって補聴器を外すことも想定し、今回ミラーをつけて免許の取得に臨んでいます。

松本教官
「仮免許、佐藤さんは満点です。自分の考えも示してくれるし、すごく理解力もあって」

仮免許も順調にパス。次の課題は卒業検定です。

聴覚障がいのある人は運転する際、視覚による状況判断がより求められます。

卒業検定を前にした、最後の路上教習。佐藤さんが運転中、突然車が急停車しました。歩行者を見落としていました。

松本教官「急ブレーキを踏んだ時、場面はどうだったかな?」
佐藤さん「右側に人がいるのが気づかなかった」

周りをよく見ていませんでした。試験を前に不安が残ります。

佐藤さん
「自信はないけど、やれることをがんばります」