毎日の食卓に欠かせない牛乳や乳製品ですが、エサ代の高騰などで、値上げが止まりません。こうした中、牧場で乳製品の原料となる搾ったばかりの「生乳」が大量に廃棄されています。
一体、何が起きているのでしょうか?
乳製品向けの“生乳取引価格”の引き上げで洋菓子店にも影響
バレンタインデーのケーキ店。店には多くの人が訪れていましたが・・・

――2023年バレンタインデーの売り上げは?
シェフ パティシエ 眞鍋允宜さん
「去年、一昨年と比べると若干届かなかった部分があります。色んなものの値上げ・・・」
追い打ちをかけるように、4月にまた値上がるものが。
シェフ パティシエ 眞鍋さん
「いまのところ生クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト類。そのあたりが見込みで『90円~120円の値上がりがある』と。利益率が悪くなるのでレシピから見直さないと」

要因の一つとなったのは、乳製品向けの“生乳取引価格”の引き上げです。
“減産”求められ酪農家の9割「経営が困難」 生乳の“大量廃棄”も
いま、日本の酪農に何が起こっているのか。
北海道の牧場では、絞りたての生乳が捨てられていました。
松枝牧場 松枝靖孝さん
「すごく悲しいです。彼ら(牛)にしたら、血液をろ過して作っている、体を削って作っているようなものなので」

そう話すのは、北海道・十勝で酪農を営む松枝靖孝さん。
新型コロナの感染拡大による乳製品の消費低迷を受けて、北海道では2022年度、生乳の生産を減らすための「生産抑制」が行われています。目標はマイナス20万トン。松枝さんの牧場でも年間で500トン、1日で1トン以上減らさなくてはいけません。牛を30頭ほど売ったり、搾乳日数を減らしたりしてきましたが、限界でした。

松枝牧場 松枝さん
「廃棄で1.75トン。17万円くらい。毎日です」
生産抑制によって収入が減る一方、ウクライナ侵攻などによるエサ代の高騰で、コストは1.5倍以上に。設備投資の返済も残っています。
松枝牧場 松枝さん
「主な収入源である牛乳が出荷できない。借金を返すための借金をしないといけない」

こうした厳しい現状への対策として、北海道では乳製品用の生乳価格を2023年度から一律で1キロあたり10円引き上げることになったのです。
それでも、酪農家が置かれている状況は深刻です。
2022年6月に中央酪農会議によると、92.4%の酪農家が「経営が困難」と感じているという調査結果もあります。