■「影の主役はアベノミクス」 新総裁で私たちの生活はどう変わる?

山本恵里伽 キャスター:
2023年4月で10年にわたる任期が満了となる、日銀の黒田総裁。
安定的に物価を2%上昇させることを目的としてきましたが、就任直後から2022年3月までの物価上昇率は2%を超えませんでした。

2022年4月にようやく2%を超えて更に上がり続けているのですが、これは原材料費の高騰や円安などが原因の“悪い物価上昇”といえます。黒田総裁は、その後も大規模な金融緩和策を維持し続けているという状況です。

小川彩佳 キャスター:
黒田総裁の路線である異次元の金融緩和を続けるのか、やめるのかが新総裁の最大の焦点だということになりますが、様々な方のお名前が挙がっていた中で、植田氏の名前が出てきたのはどうしてでしょうか。

星 浩 TBSスペシャルコメンテーター:
全体としては、影の主役はアベノミクスだったと言っていいと思います。アベノミクスの中で金融緩和を進めて、国債・株を大量買いしてマイナス金利を進めたということなんですが、これに対し日銀のOBを中心に、やりすぎだった、修正しなくてはいけないという“反黒田”路線の新しい総裁を選ぶべきだという声が上がったんですね。

これに対し、自民党・安倍派の議員を中心にアベノミクスを“継承”すべきだという、現副総裁の雨宮さんを総裁に起用する路線が望ましいという声が出始めました。

岸田総理としては、この板挟みの中で“中間”的な人を探した結果が植田新総裁候補というのが全体の真相だと思います。

小川彩佳 キャスター:
中間となりますと、植田氏の今後の金融緩和策はどうなっていくのでしょうか。

星 浩 TBSスペシャルコメンテーター:
植田さん自身も発言していますように、当面は金融緩和路線は続けるということなんですが、人事をみてみると見えてきます。

黒田さん体制の10年間、副総裁のうち1人は「リフレ派」と呼ばれる、金融緩和を強力に進めるべきだという意見の人がいました。

しかし、植田新総裁候補の下では、副総裁候補はいずれもリフレ派ではないんですね。この辺からみても、金融緩和路線には距離を置いていくだろうというのは見て取れると思います。

小川彩佳 キャスター:
星さんは、今後の展開をどうご覧になっていますか?

星 浩 TBSスペシャルコメンテーター:
植田さんは学者ですので、データに基づいて出口を探っていこうということだと思います。1年・2年かけて金利のある世界に正常化していこうということですので、住宅ローンについても来年・再来年に向けて上がってくる可能性はあるという状況だと思います。