トルコの大地震では刻々と犠牲者が増える深刻な状況。多くは建物が崩壊し、その下敷きとなって亡くなっているようです。建物が石を積み上げた、いわゆる「組積造」の建物だったことが被害を大きくしたのではという指摘が出ています。
実はこうした建物の危険性は、以前から指摘されていました。そして、その対策となる新しい技術も、日本で開発されていました。

世界人口の6割が危険な「組積造」に住む

地震被害を抑えるために世界で耐震化が急務な建物、それは「組積造」。あまり聞きませんが、どんな建物なのか。東京大学・教授で、都市震災軽減工学が専門の、目黒公郎さんに伺いました。

ーー組積造とはどんな建物なのでしょうか?

東京大学(都市震災軽減工学)教授 目黒公郎さん
「レンガとか石とか、コンクリートブロックとか、こういったものを積み上げて作る構造のことを「組積造」と言います。海外は非常にたくさん存在していて、世界の人口の6割位は、いまだに組積造に住んでらっしゃいます」

ーー組積造は、どれくらい地震に弱いのでしょうか?

東京大学(都市震災軽減工学)教授 目黒公郎さん
「もちろん場所によって違うんですけど、震度5弱位から、組積造はかなり壊れるんですよ。もう瞬時に壊れるので、避難ができない。それから一個一個の部材が、レンガ一個とか小っちゃいから、壊れると人が生き延びるための生存空間っていうのができないんですよ」

ーー被害現場を取材されたこともあるんですか?

東京大学(都市震災軽減工学)教授 目黒公郎さん
「はい、現場に行くと、ここに集落があったっていうような所が、土の山みたいになっちゃってます。もう完全に壊れて。何が何だかわからないような状態です」

日本ではほとんどないそうですが、実は世界の人口の6割がこの組積造に住んでいるそうです。日本のレンガ風の建物は、表面にレンガを張り付けているだけで、中身は鉄筋コンクリートなのですが、中東や南米などでは、石やレンガを積み上げて壁を作った組積造が多く、揺れに弱いという弱点があります。

例えば、2003年のイラン「バム地震」では、マグニチュード6.6の地震で4万人が死亡。2005年のパキスタン「カシミール地震」では、マグニチュード7.6の地震で8万~9万人が死亡。いずれも主な死因は建物の崩壊によるもので、1階建てから、5、6階建てのものも、ガラガラになってしまいます。

多くの命を救うためには、この組積造の耐震化を進めることが必要な状況なのですが、では組積造自体を作り変えることはできないのか?もちろん、地面に基礎を作った上に木や鉄筋で柱を立てれば建物は強くなりますが、コストがかかってしまいます。一方の組積造は安く作れるし、レンガの原料となる土や石は入手しやすいので、なくすことも難しいとういことです。