台湾、韓国とは競争ではなく“住み分け”

今作ろうとしている2ナノの半導体とは。現在、ルネサスなどが製造している半導体が国内では最先端の40ナノ程度で、主に家電製品などで使われている。TSMCが熊本に建設中の工場では10から20ナノの半導体を製造する予定で、自動車や産業機械などが主な用途となっている。そうした中、ラピダスは2027年までに2ナノの量産を目指すということだ。

台湾、韓国がライバルになるが、台湾のTSMCと韓国のサムスンはいずれも2022年に3ナノの量産を開始している。どちらも2025年までに2ナノの量産開始を目指しており、サムスンは27年には1.4ナノの量産を目指すとしている。
ーー日本は40ナノぐらいのものしか国産できていないのに、いくらIBMから技術を提供されるとはいえ、27年に2ナノの量産は難しくないか?
ラピダス 東哲郎会長:
非常に難しいことは事実なのですが、IBM自体が2ナノのゲートオールアラウンドという新しい構造の半導体の基本特許を持っているので、そのIBMから全面的にサポートを受けられるということが一つ大きな牙になります。海外も含めた製造装置メーカー、材料メーカーとも今一緒にいろいろやっているので、こういう会社と連携を取りながらやっていけば、もうすでに数十パーセントは達成できていると考えた方がいいと思います。
ーー3年前ぐらいからIBMから話があったという話だが、アメリカのIBMが日本にこうしたものを作ってほしいと思っている理由は何か。
ラピダス 東哲郎会長:
日本が持っている製造技術や品質です。IBMは昔から日本の会社あるいは社会が持っている信頼性、一度コミットしたことをやっていくというところを見てやっていくという特徴があります。
ーーIBMにとっても韓国、台湾だけではなく、分散していた方がいいということか。
ラピダス 東哲郎会長:
それはもちろんそうです。だからパートナーとして組んでいく場合に、信義を重んじる社会というのはIBMにとっても重要になると思います。
ーーこれから技術協力も含めいろいろな力を借りながら27年を目指すのだが、一番足りないものは何か?
ラピダス 東哲郎会長:
ここはずっと検討してきたのですが、新しい産業あるいは新しいアプリケーションを生み出すような想像力のベースになる設計力が日本に不足していて、アメリカや海外の人材を活用していくということも当面重要ではないかと考えています。
ーーTSMCやサムスンとぶつかるわけだが、何か攻め手があるのか。
ラピダス 東哲郎会長:
サムスンやTSMCと競争するということは考えていません。TSMCやサムスンは汎用の半導体をいろいろ作っているわけですが、むしろカスタム化したような専用ICがこれから2ナノレベルでもどんどん出てくる状況になりますので、私たちはそこを狙っていくという形で住み分けがうまくできるようやっていくのが、ラピダスが世界で貢献していく道ではないかなと思っています。
ーー汎用品をたくさん作るのではなく、各顧客からのカスタマイズしたオーダーを受けて素早く対応すると。
ラピダス 東哲郎会長:
ラピダスという名前の素早くというところでは、カスタム化したところを早く開発して、実証化して、生産していくという形で特徴が出てきます。
ーーその戦略は言うのは簡単だが、やるのは難しい。
ラピダス 東哲郎会長:
なかなか難しいのですが、社長以下、7人の侍と我々呼んでいるのですが、そういう人たちが集まってこの2、3年ずっと検討してきました。それでこういう形が一番いいだろうとなっていますし、小池社長は前の会社でもラピダス的な非常にサイクルタイムの早い生産形態を編み出した経験があるので、勝算はあると思います。