ミサコさん(29)は生まれたときから戸籍がない。在日フィリピン人の母親が、日本人の夫からDV被害を受け、そこから逃れる生活の中で事実婚の関係になった日本人との間にできた子だ。母親は元々の夫と離婚できておらず、子どもの存在を知られたくないということで出生届を出せなかったという。ミサコさんは無戸籍のまま大人になり、事実婚の元夫との間に2人の娘が生まれた。そして3人とも「戸籍のない人」になってしまった。今回、遂に《それ》を手にした無戸籍のシングルマザー、長く孤独な闘いに密着取材した。
戸籍のない親子3人…様々な困難が立ちはだかる

2021年5月。埼玉県越谷市に住むミサコさん(当時27)。小学生の長女・ユミさん(当時8)と次女・リアンさん(当時6)を育てるシングルマザーです。この親子3人には戸籍がありません。

ミサコさんは戸籍がないことで子どもの頃から様々な困難に直面してきました。小学校には親が掛け合い何とか入れてもらいましたが…。
(ミサコさん)
「戸籍がないと私は高校・専門学校にも行けない。『仕事もできない』と(教師に)言われていたんですよ。だから、小さい時から夢だったペットトリマーも『免許が必要だから取れないんだよ』と。私の人生は闇でしたね」
やがてミサコさんはある男性と事実婚して娘をもうけます。自分と同じ苦難を味わうことのないよう出生届を出しますが、市役所で「戸籍がないと結婚できないし出生届も受理できない」と言われました。パートナーだった男性は、2人目の娘が生まれた後、姿を消しました。戸籍だけでなく住民票やマイナンバーがないため、なかなか職には就けず、生活に困窮する日々でした。
(ミサコさん)
「夜の業界でさえも『住民票がないとダメ』っていう業界が今すごく増えちゃって。そうすると本当に気持ちがすごく沈んじゃって」