「最近はオンラインカジノで摘発された中国人が増えている」

僕がビクタン収容所に通っていたときは、収容者はだいたい100人から150人程度だった。定員が約100人なので、ほぼ収まる感じの状況ではあったんですけれども、ここ最近は中国の方のオンラインカジノで摘発された方が、何百人っていうふうに移送されてきてしまったので、収容のキャパシティをオーバーしてしまった人数が今収容されている状態で、こういう形で屋外というか、一般の収容棟に収まりきらない人たちが、あふれ出てきて雑魚寝しているというような状況だと思われます。

―――ただ、雑魚寝をする人もいれば、一方でVIPルームもあるということにちょっと驚いたんですけれど。木とトタン屋根でできた10畳以上のスペースに1人から5人程度で生活をしていると。水谷さんが取材されたときには月額約12万円で、その時々で変動するということなんですね。家賃のようなものがあるということですか。

家賃のようなものというか決まってるわけではないんですけれども、収容施設って言っても環境が劣悪な状況なんですよね。例えば、フィリピンって年間通してすごく気候が温暖なので、エアコンがない部屋だと寝苦しい。普通に収容されているだけでかなり生活しづらい状況なので、お金を支払ってエアコン付きの部屋に住まわせてもらうという意味でVIPルームで生活をしている収容者は、今までも何人かいましたね。

ただその相場というか、家賃みたいなものは、おそらくその時々で変動するんじゃないかな。収容者の方から持ちかけるのか、職員から持ちかけるのか、ちょっとわからないんですが、例えば収容所の中で支給される食事が口に合わないということで、収容者の方々は外部から、例えばマクドナルドみたいないなものを手に入れることができるんですよ。

その場合は、職員の方から「今日は何にする」っていう形で声をかけてきて「じゃあ今日はこれでお願いします」というようなのを、例えばスマホの写真で見せて、外部から手に入れてるっていうようなことは収容者の方が言っていました。

職員の銀行口座を経由してお金の授受

―――基本的な話、マクドナルドを買ってきてもらうとか、VIPルームに月12万円で住むとか、そういったことは認められていないものですよね。

公には認められていません。ただ内々でというか、収容者がいかに劣悪な環境から快適に過ごすために、職員に便宜を図ってもらう見返りとして、お金を支払うっていうのはもう昔から続いてきている習慣みたいになってますよ。

この収容所に限らず、刑務所とかでも同じようなことが行われてますね。噂レベルでしかないんですけれども、実際聞いたことありますし、これまで脱走しようとして捕まったっていうニュースは聞いたことがあります。正直、脱走しようと思えば何とでもタイミングはあるんですよね。

例えば収容者の方が、裁判所に職員と一緒に行くタイミングのときに逃げようと思えば逃げられないことはないです。要するに収容者が現金を持ってないといけないわけですよね。例えば収容者で、日本に親族がいる方が、あるいは外部の人が例えば面会時にお金を持ってきてくれたり、っていうことがまず一つありますよね。

面会する人がいない場合、例えば日本の親族が、職員の銀行口座を借りて、そこにお金を送って、職員がその収容者に渡してくれる。でもちょっと抜かれるって言ってましたけど、そういう形でお金をもらったりとか、今は携帯でやり取りができるので、多分携帯でお金のやり取りをしてる可能性がありますよね。