岩手県大槌町で東日本大震災からの復興の軌跡を伝える写真展が開かれます。撮影したのは大槌町を11年間見つめ続けた埼玉県在住の写真家の男性です。

屋根の上の観光船~被災した町の歩みを撮り続ける

報道写真家 野田雅也さん(埼玉県在住)

 カメラのシャッターを切るのは埼玉県在住の野田雅也さん。報道写真家としてこれまで世界40か国以上で自然環境や社会問題を取材し、撮影してきました。

 野田さんは震災発生の1週間後、取材のために岩手県大槌町を訪れました。そのとき見たのは、津波に流され、民宿の屋根の上に乗った観光船「はまゆり」です。

民宿の屋根の上に乗り上げた観光船(野田雅也さん撮影)

 観光船は定期検査のため、震災が発生した日に町の造船所に入ったものでした。このことを知った野田さんは造船所の撮影を始めました。

(写真家 野田雅也さん)
「船大工たちも被災者で、みんな家を流されて避難所、仮設住宅から自転車で通ったりして。タイヤに空気が入っていない自転車で。少しずつ再建を進めていく」

 この日、野田さんは町内で予定している写真展の準備のため、撮影した写真を手に造船所を訪れました。

「エンジンを入れ替える予定だったんですか?はまゆりは」
「入れ替えるというより、定期検査の方が大きかった」
「『カゼ』ってあのムラサキウニのことを示すんですか?それともウニの全体の総称なんですか?」
「総称ですがね。もうひとつはバフンウニ。総称で言っています『カゼ』って」

 造船所で働く船大工を中心に、がれきの残る町並みや漁港の再開、祭りで活気づく様子など、野田さんは11年間の出来事をカメラに収めてきました。
 今回の写真展では前半に野田さんの写真が、後半は大槌で暮らす人々が撮影した3月11日の写真が展示されます。