分布と年代が語る「海の存在と消失」
火星表面における2種類のデルタの分布を調べたところ、顕著な違いが浮かび上がりました。水位下降で形成されるロブ伸長型デルタは、先行研究で推定されていた広大な海の海岸線付近に位置しており、デルタを作り出した川の流れも北部低地側へ向かっていました。
これに対し、水位上昇で形成されるステップデルタは海岸線から離れたクレーター内(閉鎖盆地)にのみ分布しており、その標高は海岸線よりはるかに高い場所にまで及んでいました。デルタを形成した川も、海とは反対の南方向を含む様々な方向へ流れていました。
さらに、クレーター解析に基づく年代測定を実施したところ、ロブ伸長型デルタは約38億年前から32億年前までの期間に形成されていたことが判明しました。
水位が変化しない条件で形成されるチャネル分流型デルタも同様の年代値を示しました。これらの年代は、先行研究が示す海岸線・津波堆積物・バレーネットワーク・アウトフローチャネルといった流水関連地形の形成年代とも整合的でした。
これらの結果から、約38億年前から約32億年前まで火星北半球に広大な海が存在し、約32億年前頃の大規模な海退によって海が消失したことが実証されました。火星の海は、これまで考えられていたよりも長い期間にわたって存在していたことになります。














