介護のマットから、肌着の値段へ
その行き先のひとつが、リカバリーウェアです。糸に細かなセラミックなどを練り込み、体から出る熱を受け止めて体の側に放ち直す設計の服で、電気ではなく自分の体温を使います。
この市場は、急に生まれたものではありません。始まりは介護用品でした。2005年創業のベネクスは、最初は介護の現場で床ずれを防ぐマットを作っていて、余った繊維で試作した服がスポーツジムの関係者の目に留まり、運動のあとに着て休む服へと方向を変えました。2010年に発売し、「リカバリーウェア」という言葉を広めたのはこの会社だといわれています。上下で3万円台です。
そこに、2018年創業のTENTIAL(テンシャル)が2021年に「BAKUNE(バクネ)」を出します。上下2万円台を自社通販と直営店で売り、贈り物としても定着させ、2025年に上場しました。2023年には出版社の宝島社が書店で売り始め、3年半で累計85万着。2025年の秋冬にはワークマンが一般客向けに大きく広げ、2026年にニトリとドン・キホーテが続きました。ドン・キホーテの半袖インナーは1着1,099円です。
この1年で起きたことは、高い服が出てきたことではありません。3万円台の服は10年以上前からありました。変わったのは、量販店が肌着の値段で大量に売り始めた、という入口の値段です。
100円売って、残るのは6円
では、誰が儲かっているのでしょうか。
BAKUNEを売るTENTIALの直近の四半期の決算を見ると、100円売ると、仕入れなどを引いて73円が手元に残ります。服を売って得られる利益の幅が、かなり大きいのです。ところが、そのうち33円を広告に使っています。人件費や配送も引くと、本業の利益として残るのは6円ほどです。
もっと興味深いのが、先駆者のベネクスです。ベネクスを含むリカバリー事業は、最新の決算で売上が1割近く伸びているのに、赤字でした。認知を広げるための広告や人の採用にお金がかかったから、と会社は説明しています。ライバルが増えたぶん、広告で取り合いになった、というのが筆者の見立てです。
1,200万着を超えて売れる市場で、先駆者が赤字になっている。市場が広がるほど、売るための費用も増えるからです。売れていることと、儲かっていることは、別なのです。














