一方で、お金で買えないものとは?

回復は「着るもの」として、また脈や睡眠から「今日の余力」を点数で見せるスマートリングのように「測るもの」として、買いやすくなりました。それでも、ひとつの数字に戻ります。総務省の社会生活基本調査では、10歳以上の人が1日に「休養・くつろぎ」に使う時間は、2016年の1時間37分から2021年の1時間57分へ、5年で20分増えました。2021年はコロナ禍の年である点を割り引いても、休む時間は減っていません。

休む時間はあります。それでも疲れが取れないのは、その時間がスマホの通知や仕事のチャットで埋まっていて、仕事や画面から本当に離れられていないからかもしれません。リカバリーウェアを着て寝ても、寝る直前まで仕事のチャットを見ていたら頭は休まりません。回復は買えても、休んだ時間でちゃんと疲れが取れる「回復の機会」は、お金では買えないのです。

通知を増やして注意を奪う商売があり、その隣に通知を減らすアプリがあります。仕事を速くするAIがあり、その後始末で疲れた人にリカバリーウェアが売られています。疲れを生む商売と、回復を売る商売は、同じ経済の中にあります。

どちらも疲れた人の役に立とうとしている正統なビジネスです。ただ、回復を買えるようになったからといって、回復の機会が増えたわけではありません。1,200万着という数字は、資本主義が「回復」をどれだけ買いやすい商品にしたかと同時に、私たちがどれだけ回復の機会を失っているかを映しているのだと思います。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年9月24日配信『何もしてないのに、疲れる。なぜ休む時間は増えているのに、疲れは取れないのか?』から抜粋してまとめたものです。