訪問診療は、同じ建物なら8,900円が2,150円になる

専門家が家に来るサービスでは、この考え方が国の制度になっています。医療の値段を決める診療報酬の点数表では、お医者さんの訪問診療料は、患者さん1人につき890点、つまり8,900円。ところが、同じ医療機関が同じ日に同じ建物に住む別の患者さんも訪ねる場合は215点、2,150円まで下がります。医療費全体ではなく訪問診療料という一項目の話ですが、同じ建物で複数の患者さんを診る場合に点数を低く設定する仕組みです。

厚生労働省の介護事業経営概況調査では、訪問1回あたりの平均収入は訪問看護で8,248円、訪問介護で3,855円、収支差率はそれぞれ10.3%と9.6%です。訪問入浴は1回平均1万5,017円ですが、移動時間が5分から15分の事業所の収支差率が8.3%あるのに対し、45分から60分かかる事業所はマイナス0.8%でした。移動時間だけが差の原因とは言い切れないものの、止まるまでの移動が長いほど利益が薄くなる様子が、訪問入浴の数字には出ています。

誰も数えていない移動

移動の費用は、消えたわけではありません。誰かの財布に移ったか、誰も数えていないところへ移ったかのどちらかです。国土交通省の資料では、大手宅配会社で宅配便の業務にあたる正社員は2019年度の12万4,000人から2023年度には11万6,000人へ7%減り、配達総個数をこの正社員数で割った1人あたりの月間個数は2,049個から2,633個へおよそ3割増えました(委託の配達員は人数に含みません)。東京商工リサーチの調べでは、訪問介護事業者の倒産は2024年の81件から2025年には91件に増え、休廃業・解散は2025年に465件ありました。国土交通省の試算では、再配達のためだけに走るトラックが出す二酸化炭素は、2020年度で年間およそ25万トンです。家から出ない暮らしは、誰かが代わりに動くことで成り立っています。