すべてが「想定外」なのか
雨の降り方が「想定外」だったのだから、被害も「想定外」だった――「千葉豪雨」をそう結論付けても、一見、違和感はないように思える。浸水被害は浸水想定区域の範囲外にも及んだことから、ハザードマップ、とりわけ内水ハザードマップの限界を指摘する声も聞かれる。だが、本当に「想定外」の一言で「千葉豪雨」を片付けてしまって良いのか。
豪雨災害に詳しい静岡大学防災総合センターの牛山素行教授は、「内水ハザードマップを作成しても、地形的に洪水や浸水が起きうるところで、浸水想定区域にならないところは相当程度残るだろう」と話す。そして、「内水氾濫」にこだわり過ぎることの弊害についてもこう指摘する。
「内水ハザードマップばかりに注目してその想定だけを覚え込むと、その場所で本来起こりうる、規模の大きな洪水の想定が見落とされるおそれがある」
また牛山教授は、独自に「千葉豪雨」の死者13人が被災した場所について調査した内容を踏まえ、洪水で被災したとみられる場所については「すべて地形的に洪水・浸水が発生する可能性のある場所とみられる」とした上で、こう断言する。
「被災が想定されるところで被災しているのだから、全然想定外ではない」
洪水や内水、土砂災害などのハザードマップを手に街を歩くと、なぜそこに危険が潜んでいるのか、腑に落ちることが少なくない。
水は、低いところに向かって流れる。それ以上低いところがなければ、水はそこに留まる。そこへ水の流入が続けば、溜まる一方だ。だから周囲よりも低い土地は、大雨の際に浸水するリスクがある。
雨や風が強いときに屋外を移動することは、その手段が車でも二輪車でも歩行でも、安全な屋内にいる場合と比較して被災するリスクがある。川は増水している可能性があるので、遠ざかった方が良い。地盤が緩んでいるかもしれないので、崖や急傾斜地にも近づかない方が良い。
雨が降ったとき、そうした当たり前のことを意識するだけで、対応や行動は少しずつでも変わってくる。
大雨に直面して「想定外だ」と驚いたり諦めたり思考停止に陥ったりする前に、どこが危険か、どういう行為が危険かを具体的にイメージして、それらを回避する考え方や行動力を身に付けたいし、身に付けてほしいと願う。
地味かも知れないが、基本を理解していること・わきまえていることが、「想定外」への応用にも役立つのではないだろうか。
国も動き出した
内閣府は9月、有識者らによる「令和8年8月千葉豪雨を踏まえた内水氾濫対策検討会」を立ち上げた。都市部で発生する内水氾濫を念頭に、治水対策や浸水対策、避難行動を促す支援策について議論する予定で、筆者も委員として参加することになった。
国の素早い対応は、防災庁の正式スタートが11月に迫っていることも影響している。対策の検討状況や方向性については、あらためて報告したい。
【参照文献及び引用したウェブサイト等】(順不同)
銚子地方気象台「令和8年8月千葉豪雨に関する千葉県気象速報(第3報)」2026年8月26日
千葉県防災危機管理部「令和8年8月千葉豪雨について(第25報)」(2026年9月11日)
気象庁大気海洋部「令和8年(2026年)8月13日に千葉県にレベル5大雨特別警報やレベル5土砂災害特別警報を発表した事例」(2026年9月7日)
気象庁「線状降水帯半日前予測および直前予測と実際の状況等について」(2026年9月2日)
消防庁応急対策室「令和8年8月千葉豪雨による被害及び消防機関等の対応状況(第20報)」(2026年9月9日)
内閣府 令和8年8月千葉豪雨等を踏まえた内水氾濫対策検討会(第1回)「令和8年8月千葉豪雨災害等の概要と課題」(2026年9月11日)
静岡大学防災総合センター 牛山素行「2026年8月13日からの大雨に伴う災害 調査速報 人的被害発生場所について」(2026年9月9日更新)
<執筆者略歴>
福島 隆史(ふくしま・たかし)
TBSテレビ 創域報道本部 報道局 解説委員(災害担当)
社会部記者、「JNN報道特集」ディレクター、社会部デスク、JNNニュース編集長、東日本大震災発生後にJNN三陸臨時支局長などを経て現職。
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨、東日本台風、令和6年能登半島地震など、これまでに多数の災害を取材。
日本民間放送連盟 災害情報専門部会 幹事
十文字学園女子大学 非常勤講師
気象庁「広域降灰対策に資する降灰予測情報に関する検討会」委員
内閣府「災害発生時等の帰宅困難者等対策検討委員会」委員
内閣府「令和8年8月千葉豪雨等を踏まえた内水氾濫対策検討会」委員
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














