関東から台風が去ったと思ったら突然襲ってきた8月の千葉豪雨。気象庁からの警報などの防災気象情報、さらに自治体からの避難情報の発表の仕方も異例だった。しかし、すべてを“想定外”の一言で片付けてしまって良いのか。TBSテレビの災害担当解説委員が当時の防災情報の発表状況などを検証し、問題提起する。

事前の予測も警告もないまま襲ってきた豪雨

台風15号が気象庁の統計開始以降初めて茨城県に上陸し、本州を東から西へと“逆走”して横断、日本海へ抜け温帯低気圧に変わったのは2026年8月12日。異例ずくめの台風の余韻がまだ冷めやらぬ翌13日午後、〈それ〉は突如、千葉を襲った。特段の警告もなしに。

甚大な被害を引き起こした「令和8年8月千葉豪雨」(以下、「千葉豪雨」)から1か月が経過した。その節目に、本稿では「千葉豪雨」に関連して当時発表されたさまざまな災害・防災情報の分析を試みた。

具体的には、気象庁などが出した気象に関する情報(「レベル5大雨特別警報」や「気象防災速報(記録的短時間大雨)」「気象防災速報(線状降水帯直前予測)」など)や、市町村が出した避難に関する情報(「緊急安全確保」や「避難指示」)の発表状況を振り返ることによって、「千葉豪雨」の際に起きたとされる以下の3点についての裏付けを行う。

・前もって警戒を呼びかける情報が発表されなかった
・予測ができないほど気象状況が急激に悪化した
・記録的な大雨が短時間・局地的ではなく、比較的長い時間にわたって広範囲に降り続けた

その上で、当時の雨の降り方や、もたらされた被害の一部が私たちの想像を上回った点を認めつつも、「千葉豪雨」を「想定外」の一言で片付けてしまって良いのかについて問題提起したい。

緊急会見で千葉県に発表したレベル5大雨特別警報について説明する気象庁と国土交通省の担当者(8月13日)

初の「レベル5大雨特別警報」と繰り返された「数年に一度」の大雨情報

「千葉豪雨」に際し、気象庁は8月13日夜から14日未明にかけて、「レベル5大雨特別警報」を千葉県内の計22市町に相次いで発表すると共に、「レベル5土砂災害特別警報」も計6市町村に発表した。両情報とも重大な災害の起こるおそれが著しく大きい旨を知らせ最大級の警戒を呼びかける緊急度・切迫度の最も高い情報であり、どちらの発表も、新たな防災気象情報の運用が5月下旬に開始されて以降、初めてだった。

中でも千葉市・市原市・八街市・東金市・大網白里市・茂原市の6市には両方のレベル5特別警報が発表されたため、低い土地の浸水や中小河川の氾濫、土砂災害などがいつ発生しても不思議ではない危機的な状況を迎えることとなった。

さらにレベル5特別警報に先行、もしくは並行する形で、「気象防災速報(記録的短時間大雨)」(以下、「記録的短時間大雨」)が13日夕方頃から14日未明にかけて計25回、20市町に発表された。

「記録的短時間大雨」は、その地域にとって数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測・解析した場合に発表される情報なのだが、例えば千葉市には計6回、市原市・八千代市・東金市にはそれぞれ計4回発表された。そのため「記録的短時間大雨」を速報で伝えるテレビ画面には、同じ市の名が何度も表示された。「数年に一度程度」の降雨が同じ場所で繰り返し起きている事実は、極めて異常な事態が進行していることを如実に物語っていた。

 千葉市に繰り返し発表された「記録的短時間大雨」の速報(8月13日 TBSテレビの画面より)

気象庁が千葉県に天気予報を発表する(一次細分)区域には北東部・北西部・南部の3つがある。レベル5大雨特別警報が発表された22市町は北東部と北西部のどちらかに位置していて南部はなかったが、「記録的短時間大雨」の20市町は北東部・北西部・南部に分布していて、1時間に約100ミリから120ミリ以上の猛烈な雨が県内の広範囲で観測されていた。

これに対し千葉県に隣接する東京都・埼玉県・茨城県には13日・14日の2日間、「記録的短時間大雨」は1回も発表されておらず、雨の降り方は文字どおり「千葉豪雨」と言えるものだった。