その日の夕方。祭りにかかわる16地区の区長たちが神社に集まりました。

北野さん「ご存知と思いますけど、超三密の状態で的をばかい合う(うばい合う)祭りですので、皆さんの意見を聞かせください」

的ばかいは、全国からも参加者を募って、この25年祭りを維持してきました。

区長「的ばかい自体は中止した方がいいと思います」
区長「私はあえてやった方がいい。発生したらしょうがないと割り切るしかないかなと」
区長「感染者が出るのは出るんですよ。食事や旅行が解禁になっている。リスクを十分把握した上でやるんだと、そういう意見ならいいと思います」
区長「町の協力を得なければできないと思う。やっぱり諦めるしかないのかなと」

「中止」か「復活」か…話し合いは1時間ほど続き、的ばかいの3年連続中止が決まりました。

年が明けた1月7日。港の近くに住民たちの姿がありました。

磯邉さん「コロナ禍の3年目で的を作るので、なんとか今年は正月が来たなって。ワラも状態がいいし、頑張ります」

賑わう祭りの開催は見送ったものの、要望が高かった「的づくり」は再開することに。中心になるのは磯町地区の住民ですが、その作り方を細部まで覚えているのは90歳目前「米寿」の大ベテランだけです。

磯町地区の大ベテラン 88歳「やっぱ動かないと。まだ素人ばっかりだから」

朝から夕方まで2日かけて直径およそ60センチの的を作ります。ひたすら細いワラを編み込む、根気と力のいる作業です。

磯町地区の男性 45歳「楽しかったです、久しぶりに。高齢化になっているので、町の的ばかいだからみんなで盛り上げられたら後継者も出てくるのではないかと思います」

コロナ禍になって3回目の祭りの日。久しぶりに的を奉納できました。

その後、的は小さく分けられ、地域の家々の家内安全を願って神棚に祀られます。

北野さん「やっぱり気持ちが違います。伝承していかないといけない。一生懸命また取り組んでいきたい」