テレビが加担した“最も成功したテロ”の一部始終

走り切りWTCを振り返る

そして「逃げろ」の絶叫。上空からカタカタと音がする。

タワービルをバックにレポートしようとしたその瞬間だった。振り返り見上げると残ったもう1棟が崩れてきた。

その距離は2ブロック、200メートルはない。1棟目と同じようにタワービルの屋上がみるみる近づいてくる。そして下層階から土煙が噴き出して迫ってきた。

火山から流れ下る火砕流、暴れる入道雲が覆いかぶさってくるような恐ろしさがあった。煙から逃れるため走り、必死にレポートした。

その時はその2分余りのレポートが、丸ごと繰り返しテロで特別編成されたテレビ番組でオンエアされるとは思ってもいなかった。通常のテレビニュースでの記者の顔出しレポートは、15秒から長くても30秒だ。

レポート後半はVTRを短縮するためのカット割りを意識していた。フレームアウトして映像をスムーズにつなげるようにというテレビ記者の習性だ。ことの大きさの前では、まったく必要のない試みだった。

その後、4機目の旅客機が乗客の阻止でピッツバーグ郊外に墜落したとの情報が入った。世界中のテレビ局が48時間の生放送を組んだ。ドミノ倒しのように次々とイベントが起き、それをテレビが実況中継していく。

世界中の人々が平和な日常を剥奪されるテロの恐怖を画面から植え付けられた。

結果的にテレビが加担した“最も成功したテロ”と言われている。それは、テロリストのたくらみを超えてメディア時代に仕組まれた最悪のシナリオだったように今思える。

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