「逃げられず追いつめられる心理構造」在留カード取り上げと劣悪な寮環境がもたらす害悪

北海学園大学経済学部の宮入隆教授(8月18日)

また、この親子がたびたび在留カードやパスポートを取り上げると発言することの問題を次のように解説する。

「在留カードやパスポートを取り上げて、帰さないようにして相手を脅すことは、そもそも登録支援機関としての資格はすぐに剥奪される、認定を取り消される問題になります。入管法上の問題には、間違いなくなります」

在留カードやパスポートを取り上げられることは、外国人特定技能にとっては心理的にはどういう状態に追い込まれるのか?

「在留カードやパスポートがなければ移動はできないわけです。移動できないということ自体が、ずっとここで働かないといけないという形での人格的な支配をもたらします。一方で、言うことを聞かないのならミャンマーに帰すぞという逆のことを言われるわけです。物理的に帰れない。だけどお前みたいなやつは働くのではなくミャンマーに帰す、みたいなことを言われる。やはり心理的に混乱させながら、相手が言うことを聞くしかない状況を作り出すための手法なんじゃないかなと思います。本当怖いやり方です」

北海学園大学経済学部の宮入隆教授(8月18日)

寮の環境が劣悪だが、こうしたケースはあんまりないのか?

「北海道で、外国人が通年で雇用される場合、あまりにも古いプレハブ住宅なんかだと冬は寒いから大変です。基本的には本州よりも住環境が良いというのが一般的ですね。外国人をたくさん雇用するところだと、わざわざアパートなどを新築しているところもあります。古い建物でもリフォームして、母国の家族と連絡するためにフリーWi-Fiを設置するのは当たり前になっていますし、冷蔵庫やストーブも備え付けて受け入れ側で準備することは今は基本です。(M社のように)これだけ古いところに押し込めて、しかもすごく汚れているところに住まわせるというのは今の時代ありえないことです。雇用環境も大事ですけれども、生活環境をしっかりと整備していくことが、外国人労働者もしくは日本人の若者でもそうですけど、定着する基本条件になっています。日本人でも外国人でも、少しでも長く働いてもらうために、住環境をしっかりしていくというのが条件になりつつあります。そういうのを無視して外国人だから、劣悪な環境でもいいでしょう、母国でもそんないいところに住んでいなかっただろうみたいな形でやることはあり得えません」

寮の割れた窓ガラス

「昔の先祖返りしたみたいな亡霊が表れているようなそんなイメージ」とまで語る宮入教授。こんなケースは、今はありえないと何度も口にしながらも、今回の問題に危機感を募らせる。

「なぜ今、北海道の農業が、こういった事例を少なくしてきたかというと、やっぱり地域の中でしっかりと、問題が起こらないようにしてきたからです。そうしないと経済的なデメリットが大きすぎるんですよ。もし1人でも問題を起こせばその地域に人が来てくれなくなる。日本人の若者に逃げられて、外国人に逃げられたら北海道の農業は終わってしまいます。北海道の農業経営は先進的な技術があり、経営ノウハウなどがすごく充実しています。何が問題かというと、人手不足です。外国人が今7000人入っているわけですね、北海道農業だけで。この人たちがもしいなくなってしまうと北海道の農業はもう続かなくなってしまいます。経済的なデメリットも含めて考えた場合に、地域としてこういう問題が起こらないようにしようという体制作りが、今非常に重要になってくると思います」

ミャンマー人女性が暮らしていた寮

HBCは、この農業法人を実質的に運営する父親・長男・次男に直接取材を申し込んだが、8月20日までに取材に応じることはなかった。

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