「考えない日はなかった」

無駄を削ぎ落とした走りで世界と渡り合う村竹だが、胸の奥には消えない悔しさが刻まれている。日本初のメダル獲得を狙った2025年の東京世界陸上・決勝では、メダルまでわずか0秒06届かず5位。レース直後には悔し涙を流した。

二宮:悔しいじゃない、負けると思って走ってないんだから。何日くらいそのことを考えた?

村竹:もう、今まで。

二宮:ずっとだ…!

村竹:考えない日はなかったと思います。

二宮:「何が足りなかったのか」ということに対しても、ずっと覚えておくもの?

村竹:それに対しても、考えるのをやめないことが大事なのかなと思っているので。

「緊張と緊張感は違う」

あの日届かなかったわずかな差を埋めるため、自身と向き合い続ける村竹。対談の途中、村竹から二宮へひとつの相談が持ちかけられた。

村竹:相談したいことがあるんですけど…

二宮:俺に?俺だよ?!

村竹:二宮さんも人前に立ってパフォーマンスすると思うんですけど、緊張したりするのかなって。

二宮:大変申し訳ないんですが…私緊張しないタイプの人間でして。緊張する?

村竹:緊張しますよ。競技当日だとしたら、ウォーミングアップの最中。直前とか始まった時とかが一番緊張してますね。

二宮:スイッチが入る瞬間?

村竹:「スイッチを入れなきゃ」ってためらっている感じ。これ押したら試合が始まっちゃうみたいな。

二宮:緊張と緊張感は違うと思っていて。緊張感を持っていれば緊張しないと思っているタイプなので。僕もポジティブな考えの人じゃないので、何かのミスをするって思った時にミスすることを徹底的に突き詰めるんです。そうすると、最終的に突き詰めたことをやらなければ大きなミスは起きない、ということで乗り切っている。最悪のことを想定し続けると、“ネガティブ”はあんまり見えなくなってくるというか。

プレッシャーに押しつぶされるのではなく、常に緊張感を保持してあらゆる事態を想定しておくこと――第一線でパフォーマンスを続けてきた二宮ならではの貴重な助言に、村竹も深く頷いていた。